株式会社NIJINでは、教育課題を本質から解決するために、各事業の代表が毎週集まり、「事業代表会議」を行っています。
本ブログでは、社内起業プログラム「星野起業塾」の一環でもあるこの会議の様子を、月に1回の定期レポートとしてお届けします。
6月の会議では、各代表が自らの実力不足や事業の壁に向き合い、教育への想いを「戦略」に変えることを求められました。
前月のレポートはこちら: 【2026年6月度】教育を変える起業のリアル〜NIJIN事業代表会議レポート〜
そして7月、会議で何度も繰り返されたのは、より根本的な問いでした。
イベントを開催する。記事を書く。SNSを更新する。ピッチコンテストへ応募する。どれも事業を前に進めるために必要な行動です。
しかし、目の前の顧客が見えていなければ、その行動はいつしか「やること」自体が目的になってしまいます。
2026年7月の事業代表会議では、3人の代表がそれぞれ、誰を、どのような状態から、どのような未来へ連れていく事業なのかを改めて問われました。
教育 起業のリアル:「誰を幸せにするのか」から逃げない3つの転換
授業てらす 横山 竜也
教員研修プラットフォーム「授業てらす」 を率いる横山は、7月、これまで追い続けてきた「会員数」という数字から、事業の本質へと視点を移そうとしていました。
きっかけは、授業改善プログラムに参加した一人の教員から届いたメッセージでした。
以前は毎日の授業を考えることが苦痛だった。しかし、授業てらすで学んだことで、子どもたちがどのように反応するのかを想像しながら授業を準備できるようになり、「先生をすることが楽しくなった」と言います。
横山は、この変化こそが授業てらすの生み出している価値だと気づきました。
そこで、参加者の変化を記事、YouTube、SNSで発信し、新しく入会した先生が学び、実践し、授業を見せ、フィードバックを受けるまでの流れを仕組みにしようと考えます。
しかし、考え抜いて作った計画に対して、星野代表から返ってきたのは厳しい指摘でした。
複雑な工程を用意しても、それが参加者にとって「運営へ引きずり込まれる仕組み」に見えてしまえば、価値にはなりません。
本当に必要なのは、横山自身が考えたメニューを顧客に当てはめることではなく、一人の先生を観察し、その先生が変わるために必要なものを見つけることでした。
イベントを開催して終わるのではなく、参加者と直接話し、何に困っているのかを知る。授業てらすによって変わった先生の物語を届け、次の一歩につなげる。さらに、入会時期を月1回に定め、オリエンテーションを行う構想も進みました。
会員数を増やすために先生を見るのではなく、先生を幸せにした結果として会員が増える。その順番を取り戻す挑戦が始まっています。
中学校てらす 青野 祥人
中学校教員コミュニティ「中学校てらす」 の青野は、教育イベントやピッチへの応募、動画発信、教員向けアワードの企画など、さまざまな挑戦を続けていました。
それでも、会員数やイベント参加者数は思うように伸びません。
青野は、中学校現場で何かに挑戦しようとすると、「問題が起きるならやめておこう」「楽しむことは教師として正しいのか」といった空気が生まれ、次第に先生たちが動けなくなっていく現実を語りました。
その状況を変えるために掲げたのが、「つながる・語る・変わる」という方向性です。
しかし、会議では、その言葉の曖昧さが問われました。
「職員室でくすぶっている先生」という表現だけでは、どのような悩みを抱え、何を求めている人なのかが見えません。
誰に届けるかが決まらなければ、Web、イベント、SNS、営業など、どの手段を選ぶべきかも決められません。
月末には、象徴的な出来事が起こります。中学校てらすから2人の会員が離れることになりました。
一人は、学校現場で孤立していた若手教員。もう一人は、立場が変わり、忙しさの中で活動に参加できなくなった中堅教員。まさに中学校てらすが支えたいと考えていた人たちでした。
イベントや交流の場を用意しても、現場を変えるところまで伴走できなければ、本当に救ったことにはならない。その事実を前に、青野は伴走型の支援を構想します。
しかし、さらに深く問われたのは、施策の中身ではありませんでした。
リーダーは、事業が順調な時だけ前向きであればよいのではありません。結果が出ない時、仲間が離れた時に、誰よりも明るく未来を示せるかが問われます。
青野は一度立ち止まり、事業代表会議を離れて、自分自身の原点や実現したい未来と向き合う時間を取ることになりました。
これは撤退ではありません。手段を増やす前に、なぜ自分がこの事業をするのかを取り戻すための再出発です。
先生キャリアコーチ 森川 陸
教員のキャリア選択を支援する「先生キャリアコーチ」 の森川は、7月、事業のミッションとビジョンを大きく研ぎ澄ませました。
森川自身、教員時代に転職活動へ踏み出しながら、30社以上の選考に落ちた経験があります。
授業中にApple Watchへ届く不採用通知。面接官から投げかけられた「あなたは、うちの会社で何ができるのですか」という言葉。そして、誰にも転職活動について相談できない孤独。
あの頃の自分に必要だったものを形にしたい。その物語が加わったことで、先生キャリアコーチのピッチは、単なるサービス説明から、人の心を動かすプレゼンへと変わり始めました。
自己理解のためのコーチング、教員から転職した経験者とのメンタリング、そして企業での社会体験。森川は「体験して選ぶ」という独自のキャリア支援を設計し、モニター募集を開始します。
Webページから最初の申し込みも生まれ、東京・大阪・福岡などのピッチやアクセラレーションプログラムにも次々と応募しました。
一方で、目標とするモニター数に対して、申し込みはまだ1件。集客のためのウェビナーに意識が集中し、視野が狭くなっていることも明らかになりました。
会議では、ウェビナーだけに頼らず、LINEや個別相談を活用し、一人ひとりと直接対話する方法へ切り替えることが提案されます。
さらに、企業での社会体験を外部へ任せようとした際には、星野代表からこう問われました。
森川は、楽に運営するためではなく、先生が本当に外の世界を体験できる仕組みを、自分たちの手でつくる方向へ軌道修正します。
そして月末、企業向けに「キャリアダイブ」という社会体験プログラムを提案しました。
先生が企業を見学し、業務の一部を体験し、社員と対話する。企業にとっても、教員経験を持つ人材との接点や採用候補との出会い、社会貢献の発信につながります。
プレゼンを聞いた参加者から、その場で「自社でも実施したい」という声が上がりました。
構想を語る段階から、企業へ営業し、実績をつくる段階へ。森川には、将来的な法人化と経営者としての覚悟も問われ始めています。
施策ではなく、顧客の変化から事業をつくる
7月の事業代表会議では、3人の代表が異なる課題に取り組みながら、同じ問いへたどり着きました。
誰を幸せにしたいのか。
その人は今、何に苦しんでいるのか。
自分たちの事業によって、その人の行動や人生はどう変わるのか。
教育への想いが強くても、イベントを開催しただけでは教育課題は解決しません。コミュニティをつくっただけでも、社会体験の機会を用意しただけでも、人が自動的に変わるわけではありません。
顧客を観察し、仮説を立て、実践し、その結果を確かめる。そして、代表自身が関わり続けなくても価値が生まれる仕組みへと変えていく。
それが、想いを持続可能な教育 起業へ変えるということです。
星野代表が問う「今週、誰を幸せにしたのか」という言葉は、事業の規模や売上だけでは測れない、教育事業の原点を突いています。
目の前の一人を幸せにできない事業が、全国の教育を変えることはできません。
だからこそNIJINの事業代表たちは、格好のよい計画や発表だけではなく、目の前の顧客と結果に向き合い続けます。
教育 起業へ。
次は、あなたの番かもしれない。
今の教育システムに違和感を抱いている。
学校の枠を越えて、子どもたちや先生を本気で幸せにしたい。
教育への想いだけで終わらせず、顧客と向き合い、事業として社会へ届けたい人をNIJINは求めています。
ここにあるのは、完成された正解ではありません。仲間と本気でぶつかり、自らの未熟さを認め、それでも教育を変えるために行動し続ける環境です。
教育を変えるのは、評論家ではなく、行動する実践者です。
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