教員から起業するには、何から始めればよいのでしょうか。
教育に関わる仕事を続けたい。でも、収入や家族の生活を考えると、簡単には退職を決められない。そんな段階でも、整理できることがあります。
先に答えると、教員経験を活かして起業する道はあります。ただし、在職中に事業を営めるかは、勤務先や活動内容によって異なります。「勤務時間外だから」「教育のためだから」と、自己判断して始めないことが大前提です。[1][2][3]
最初に考えたいこと
退職を決める前に、
確かめられることがある。
誰の困りごとを解決するのか。今の立場でどこまで準備できるのか。生活を守りながら続けられる収支なのか。まずは、この3つを具体的にしましょう。
この記事では、兼業のルールを確認したうえで、教員経験を活かす事業アイデアと、退職前に考えたい5つの準備を解説します。途中では、元教員が事業づくりに取り組む実例も紹介します。
主に小学校・中学校・高校等の教員を想定した一般的な解説です。公立については常勤教員を中心に説明しています。国立学校・大学・非常勤等は扱いが異なるため、所属先に確認してください。個別の活動についての法的判断や許可を示すものではありません。
教員は在職中に起業できる?
公立・私立で違うルールを、先に確認する。
まず分けたいのは、起業について学ぶ・計画することと、顧客を募り、サービスを提供することです。会社の役員になる、継続して講座を運営する、教材を販売するといった活動に進む前には、具体的な内容で確認が必要です。[1][2][3]
公立学校の常勤教員
営利企業への従事等には許可が必要です。教育に関する兼職等も、教育公務員特例法と所属先の規程に基づく確認・手続きを行います。[1][2]
- 確認する相手
- 管理職や教育委員会の服務担当など、所属先が定める窓口。許可・承認権者は規程によって異なります。
私立学校の教員
公立教員と同じ制度ではありません。雇用契約・就業規則を確認し、必要な届出や許可の手続きを行います。[3]
- 確認する相手
- 学校法人の人事・労務担当など。すでに転職した方も、現在の勤務先のルールを確認します。
公立の具体的な手続きの例として参照している東京都の規程は、都立学校の職員等を対象とするものです。全国共通の運用として示すものではありません。[2]
「教育のため」「無報酬」でも、自動的に認められるわけではない
教育公務員特例法第17条には、本務の遂行に支障がないと認められる場合の、教育に関する兼職等について定めがあります。同条は有償・無償の両方を対象にしています。報酬の有無だけで、手続きが不要とは判断できません。[1]
相談するときは「起業してもいいですか」だけでなく、活動内容、相手先、自分の役割、頻度と時間、報酬、勤務校との関係を一枚にまとめましょう。東京都の規程でも、本務への支障や勤務校との密接な関係などが審査の観点に含まれています。[2]
準備と実行は、この順番で考える
- 学ぶ・整理する公開情報で調べ、自分の経験を振り返る。
- 活動を具体化する相手・内容・時間・報酬を書き出す。
- 確認・手続きをする必要な許可や承認を、実施前に確認する。
- 認められた範囲で行う条件を守り、変更時の扱いも確認する。
教員経験を活かす、6つの事業アイデア
得意なことを、誰かが必要とするサービスに変える。
「自分にできることは、教えることだけかもしれない」。そう感じたら、日々の仕事を少し細かく分けてみてください。授業をつくる、子どものつまずきを見つける、保護者の話を聞く、人と協力して行事を進める。それぞれを、事業で必要な仕事に置き換えて考えられます。
ただし、経験があることと、料金を払って選ばれることは別です。「誰に」「何を届けるのか」「何を先に確かめるのか」をセットで考えてみましょう。
以下は検討用の企画例であり、市場規模・収益性や、在職中に実施できることを示す一覧ではありません。事業ごとの許認可・安全管理・契約等も別途確認が必要です。
オンラインの個別学習支援
「分数が分からなくなった小学生」など、つまずきに絞って学習を支える。
- 支払う相手
- 保護者
- 先に確認
- 既存の塾で解決していない悩みと、指導・準備にかかる時間。
探究・体験型の教室
地域の人や仕事に出会い、子どもが自分の問いを深める少人数のプログラム。
- 支払う相手
- 保護者、連携企業等
- 先に確認
- 参加しやすい時間・場所、安全管理、継続開催できる体制。
先生向けの研修・学びの場
授業案を持ち寄って相談するなど、明日の実践につながる学びの場をつくる。
- 支払う相手
- 教員個人、学校、研修主催者
- 先に確認
- 無料の勉強会との違いと、お金を払ってでも解決したい課題。
教材・学習コンテンツ制作
特定の単元や場面に絞り、教材、解説動画、授業準備に使える資料をつくる。
- 支払う相手
- 保護者、教員、教育事業者
- 先に確認
- 使う場面、制作工数、著作権や素材の利用条件。
フリースクール・居場所づくり
学校以外で、自分のペースで学びたい子どもを支える場をつくる。
- 支払う相手
- 保護者等、事業の設計による
- 先に確認
- 子どもの安全、人員、施設、運営資金、家庭や学校との連携。
学校・教育事業者の業務支援
教材管理や情報共有など、現場の手間を減らす仕組みを一緒に考える。
- 支払う相手
- 学校法人、教育事業者等
- 先に確認
- 導入を決める人、予算、情報管理、導入後の支援範囲。
事業の原点は、特別な発明でなくてもかまいません。自分が困った経験や、誰かに支えられた経験を、次の人のためにどう活かすか。そこから具体的な仕事を考える方法もあります。
実例は、NIJINが公開したインタビューをもとに紹介しています。経歴・活動は各記事公開時点の情報であり、現在公立教員の方が同様の活動をできることや、同じ成果を得られることを示すものではありません。
退職前に考えたい、5つの準備
思いを、実行できる計画に変えていく。
事業の方向が見えてきたら、次は具体的な計画です。最初から完璧な企画書をつくる必要はありません。分かっていることと、まだ確かめていないことを分けるところから始めます。
「教育をよくしたい」を、一人の困りごとまで具体化する
大きな目標は、そのまま持っていてかまいません。ただ、最初のサービスを考えるときは、相手の状況を絞ってみましょう。
勉強が苦手な子を支えたい。
小学校高学年で分数が分からなくなり、宿題のたびに親子で困っている家庭を支えたい。
ここまで具体化すると、何を教えるかだけでなく、どの時間帯に提供するか、どんな変化を確かめるかも考えやすくなります。学校で得た気づきは、個人が特定される情報を持ち出さず、一般化して整理しましょう。
利用する人と、料金を払う人を分けて考える
子ども向けの教室なら、利用者は子どもでも、申込みや支払いをするのは保護者、という設計が考えられます。学校向けの研修では、参加する人と予算を決める人が違う場合もあるでしょう。
「子どもが楽しそうだった」「先生がほめてくれた」だけで、事業になるとは判断しない。利用者が求める体験と、支払う側が確かめたい成果・条件の両方を整理します。
話を聞くときは、「こんなサービスがあったら使いますか」だけでなく、「最近、どんな場面で困りましたか」「今はどう対応していますか」「その方法では何が足りませんか」と、具体的な経験を尋ねてみましょう。
勤務校の保護者を営業先にすることは避け、職務と切り離した方法を検討します。外部への働きかけが兼業等に当たるか迷う場合も、先に所属先に確認してください。[2]
大きくつくる前に、小さな企画を人に見てもらう
教室を借りたり、高額なシステムを導入したりする前に、「誰に・何を・どの期間・いくらで届けるか」を一枚にします。年間講座の前に4回のプログラムを考えるなど、最小限の企画に分けてみてください。
そのうえで、「なぜこの相手なのか」「既存のサービスでは何が足りないのか」を、第三者にも問い返してもらいます。自分だけでは気づかなかった前提を見直すためです。
実際の募集・提供に進むのは、必要な確認と許可等を済ませてから。実施できる段階になったら、満足度に加えて、申込みの理由、継続意向、準備や連絡にかかった時間も記録しましょう。[1][2][3]
売上を、そのまま自分の収入と思わない
起業後の生活を考える際は、売上と教員の給与の手取りを、そのまま比べないようにしましょう。教材費、外注費、会場費などを支払った後に、いくら残るのかを計算します。
月額制の教育サービスを想定した、仮の計算
月額10,000円・利用者20人とした場合
- 売上10,000円 × 20人
- 200,000 円
- 変動費教材・外注費等を1人3,000円と仮定
- −60,000 円
- 固定費会場費・通信費・広告費等の予算を仮定
- −60,000 円
- 上記の経費を引いた差額
- 80,000 円
価格・人数・費用は説明用の仮定で、相場や実際の収益ではありません。この差額は、本人の税金・社会保険料、借入元金の返済、生活費等を差し引く前の金額です。本人の労働時間も評価していません。
同じ条件で利用者が10人なら、売上100,000円から変動費30,000円と固定費60,000円を引き、差額は10,000円です。想定より申込みが少ない場合も計算すると、必要な資金や見直すべき条件が分かります。
さらに、授業以外の準備、保護者への連絡、集客、経理の時間も見積もりましょう。計画書の項目を整理する際は、日本政策金融公庫の「創業計画の書き方」も参考になります。[4]
退職の時期を、家計と実行条件から考える
「辞めたほうが本気になれる」と、自分を追い込む必要はありません。生活のためのお金と事業のためのお金を分けて、売上が立たない期間も想定します。
- 毎月の生活費と事業費に、いくら必要か。
- 売上が想定に届かなかったとき、どこまで資金を使えるか。
- 準備・提供・集客まで含めて、どのくらいの時間を確保できるか。
- 家族と共有しておく条件と、計画を見直す時期はいつか。
「月の売上がこの額になったら」だけでなく、継続利用の見込み、提供にかかる時間、資金の余裕もそろえて考えましょう。退職することをゴールにせず、その後も、届けたい教育を続けられるかを判断の軸にします。
一人で独立する以外の選択肢もある
実現したい教育と、今の生活の両方から進み方を選ぶ。
起業に関心があるからといって、すべてを一人で用意する方法だけに絞る必要はありません。選択肢を比較するときは、「事業の意思決定」「使える資金や人とのつながり」「自分が担う責任」を分けて確認しましょう。
- 自分で独立して始める
- サービスや運営方針を自分で決める。その分、資金・集客・契約・運営をどう整えるかまで計画する。
- 教育事業者で経験を積む
- 企画・営業・運営など、教員時代とは違う仕事を経験する。希望する役割を担えるか、仕事内容を確かめる。
- 既存の組織で事業を育てる
- 組織の基盤を使いながら挑戦する。意思決定の範囲、費用負担、収益配分、将来の事業の帰属を確認する。
上記は選択肢を比較するための整理です。実際に担う仕事・権限・契約条件は、事業や組織によって異なります。

教員の起業で、よくある疑問
まだ事業アイデアがなくても、準備できますか?
教員を続けながら、小さく始められますか?
経営の経験がないと、起業は難しいですか?
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退職届ではなく、支えたい相手のことから。
自分の考えを、言葉にする。
- 支えたい相手
- 私は、____な人を支えたい。
- 困りごと
- その人は、____に困っている。
- 届けたい変化
- ____できる状態にしたい。
- 次に確かめること
- まず、____を確認する。
空欄があってもかまいません。その空欄が、次に調べたり、誰かに相談したりするテーマになります。
教員として積み重ねた経験を、どんな相手に、どんな形で届けていくのか。起業は、その答えを探す一つの方法です。今日決めるのは、退職する日ではなく、次に確かめること。そこから始めてみてください。
出典・参考情報を確認する
情報確認:2026年9月19日。この記事は株式会社NIJINが制作し、同社の事業に関わる方の公開インタビューを実例として紹介しています。企画例・準備手順・収支例は編集上の提案です。制度・募集条件は変更される場合があります。個別の許認可、税務・社会保険、契約・安全管理等は、所管窓口や専門家へ確認してください。

