株式会社NIJINは、東京都が主催する青山創業促進センター「ASAC」の第17期アクセラレーションプログラムに採択されました。応募103件の中から選ばれた受講者は12社。開校から約2カ月だったNIJINアカデミーが、教育課題を仕組みから解決するスタートアップとして、5カ月間の事業成長プログラムへ進みました。
2023年8月28日から9月18日まで募集
書類審査・面接審査を経て第17期に採択
この採択は、完成した事業を表彰する「受賞」ではありません。成長の可能性を持つ創業初期の事業が選考を通過し、東京都の支援のもとで事業モデルを磨く機会を得たことを意味します。
この記事では、ASACとはどのような施設なのか、103件から12社が選ばれた選考の流れ、NIJINアカデミーが採択された当時の事業、5カ月間のプログラムが目指すものを紹介します。
ASACとは?東京都が創業初期のスタートアップを育てる場所
ASACは、東京都が設置する青山創業促進センターです。創業予定者や創業間もないスタートアップに対し、短期集中型の育成プログラム、メンタリング、起業家コミュニティ、事業発表の機会を提供します。
一般的な投資プログラムだけでは支援が届きにくい事業も対象です。東京都は、政策課題の解決につながる分野や、事業化に時間がかかるものづくり・環境エネルギー・ソーシャル分野などを、ASACの注力対象として掲げています。
ASACは青山・表参道エリアに、コワーキングスペース、イベントスペース、先輩起業家のオフィスなどを備えています。第17期当時は東京都からの委託を受け、デロイトトーマツベンチャーサポートがプログラム運営を担っていました。
- 正式名称
- 青山創業促進センター
- 略称
- ASAC(Aoyama Startup Acceleration Center)
- 主催
- 東京都
- 所在地
- 東京都渋谷区神宮前5丁目53番67号 コスモス青山SOUTH棟3〜5階
- 第17期の募集期間
- 2023年8月28日〜9月18日
- 応募数・採択数
- 103件の応募から12社を採択
- キックオフ
- 2023年11月14日
- プログラム期間
- 2023年11月〜2024年3月の約5カ月間
- デモデイ
- 2024年3月下旬
「採択」は賞ではなく、成長プログラムへの参加資格
採択企業は5カ月間のプログラムを受講し、事業計画、顧客への価値、成長戦略、連携先への伝え方などを磨きます。採択はゴールではなく、検証と成長を始める入口です。
東京都の資料によると、第17期は書類審査と面接審査を経て12社が決定しました。その後、研修・ワークショップ、インキュベーションマネージャーや外部メンターとの個別メンタリング、先輩起業家との交流を行い、終盤のデモデイへ進みます。
社会課題、事業モデル、実行状況、成長構想などをもとにエントリーします。
提出した事業計画と面接を通して、プログラム受講者が選考されました。
応募103件の中から、株式会社NIJINを含む12社が公表されました。
メンタリング、研修、ワークショップ、同期や先輩起業家との交流を通して事業を磨きます。
投資家や大企業などへ、事業モデル、サービス、提携可能性を伝える最終発表へ進みます。
採択された事業は、不登校の小中学生向けオンラインスクール
東京都の採択発表では、NIJINの事業プランは「不登校の小中学生向けオンラインスクール」と記載されました。ASACの受講者紹介では、「全ての子どもに学ぶ楽しさと居場所を」「この世から不登校を無くす」を掲げる学校として紹介されています。
NIJINアカデミーは2023年9月に開校したばかりでした。採択発表は同年11月。わずか約2カ月の間に、学校に行けないことで自信を失っていた子どもが明るさを取り戻したこと、授業で発言したり、友達との交流や学習を楽しんだりする変化が、児童生徒や保護者の声として届けられていました。
採択時には、タツロー校長のYouTubeでもASAC第17期への採択を報告しました。発表資料だけでは伝わりにくい、採択を受けたときの率直な言葉や、NIJINアカデミーが目指す教育の姿を動画で確認できます。
なぜ教育スタートアップがASACの対象になり得たのか
東京都やASACは、NIJINについて個別の採択理由や審査点を公表していません。ただし、ASACが重視する支援領域と、当時のNIJINアカデミーの事業を照らし合わせると、採択の背景を考えるための重要な接点が見えてきます。
不登校を家庭や個人だけの問題にせず、学びへのアクセスを保障する社会の仕組みとして捉えていました。
子どもの自己肯定感、居場所、学ぶ意欲など、短期的な売上だけでは測れない価値を扱う事業です。
構想段階だけでなく、実際に子どもが参加し、家庭から具体的な変化の声が生まれていました。
オンラインを活用することで、地域の施設や人材の有無に左右されず、全国へ教育を届ける可能性を持っていました。
第17期には、異なる社会課題へ挑む12社が採択
同期に選ばれたのは、AI、コンプライアンス、高齢者教育、採用、スポーツ、医療、リユース、ファンビジネスなど、多様な領域のスタートアップです。NIJINは教育企業だけの枠ではなく、異なる産業の起業家と同じ環境で事業を磨きました。
トレーディングカードの価値・真贋鑑定
企業リスクを可視化するデータサービス
推し活を起点にした新規事業
動画コンテンツによる施設内学校
採用効率を高めるAI採用アプリ
不登校の小中学生向けオンラインスクール
AI統合型AR開発プラットフォーム
AIを活用した業務支援サービス
努力を可視化する次世代の部活アプリ
寄付を活用した子ども靴レンタル
側弯症の早期発見を目指す検査システム
顧客活動をつなぐロイヤリティ基盤
5カ月間で磨くのは、ピッチだけではない
ASACのプログラムは、最終発表を上手にするためだけの講座ではありません。外部メンターやインキュベーションマネージャーとの対話を通じて、事業の根拠、届ける相手、成長の方法、協力者へ伝える言葉を何度も見直します。
事業計画や課題を外部の視点から検証し、次に取り組むことを具体化します。
事業の基礎と成長に必要な知識を学び、自社の計画へ落とし込みます。
異なる業界の起業家と課題を共有し、経験やネットワークを持ち寄ります。
資金調達や共同事業を見据え、サービスの価値と社会への広がりを伝えます。
星野達郎がASACへ応募した理由
「経営者として、もっと成長しなければいけない。」
星野はプログラム修了後、増え続ける不登校と、教育体験や人との出会いを失う子どもの現状を変えるために、経営者として成長する必要を感じ、ASACへ応募したと振り返っています。
教員として子どものそばに立つことと、経営者として仕組みを広げることは、必要な能力が異なります。教育への思いだけでは、採用、資金、広報、連携、組織づくりを伴う事業を全国へ広げられません。ASACへの採択は、教育実践を持続可能な社会事業へ変えるための学びに入ったことを意味します。
採択から始まった、次の5カ月
スタートアップの価値は、採択された肩書だけでは決まりません。支援を受けて何を見直し、誰と出会い、子どもへ届く教育をどこまで広げられたか。その過程にこそ、ASAC第17期採択の意味があります。

