新人への研修は、仕事を一度に教えるより、「大切にすること」「任せる範囲」「困ったときの相談先」を一緒に確かめるところから始めましょう。
説明を聞いた人が、現場で同じ判断をできるとは限りません。説明→見学→短い練習→振り返りを一組にし、次に任せる仕事を決めると、研修と日々の運営がつながります。
この記事では、フリースクールの教室長や、新しくスタッフを迎える方に向けて、最初に共有したい6項目と進め方を整理します。研修内容や日程は施設の役割・契約・子どもの状況に合わせて調整してください。
以下の表・会話・研修の順番は、編集部が作成した運営上の例です。NIJINの内部研修マニュアルや、全施設に共通する必須の課程を示したものではありません。
研修のゴールは「説明した」から「一緒に確かめた」へ
新しいスタッフに理念の資料を渡し、施設を案内して、活動へ入ってもらう。その流れだけでは、本人が何を理解し、どこで迷っているかが見えにくくなります。「質問はありますか」と聞いても、初めての現場では、何を質問すればよいか分からないこともあります。
そこで、研修の終わりに確かめる行動を先に決めます。例えば「分からないことが起きたら担当者へ確認できる」「観察した事実と自分の解釈を分けて記録できる」などです。子どもへの対応を一人で完結できることを、最初のゴールにする必要はありません。
文部科学省の不登校支援に関する通知では、登校という結果だけを目標とせず、本人の希望を尊重し、家庭や関係機関と連携する考え方が示されています。この視点を、自分たちの施設での声のかけ方や情報共有にどう落とすかを話し合います。
出典:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」。以下の6項目は、この通知で指定された研修項目ではありません。
最初に共有したい6項目と、確認する行動
理念を説明する時間と、鍵や連絡手段を確認する時間は、役割が異なります。どちらかだけに偏らず、次の6項目を「説明したか」ではなく「一緒に試せたか」で見てみましょう。
| 共有すること | 説明する内容 | 一緒に確かめる行動 |
|---|---|---|
| ① 大切にする関わり | 本人の希望の聞き方、活動を選べる範囲 | 参加したくない場面を例に、声のかけ方を話す |
| ② 担当と権限 | 自分が任される仕事、確認が必要な判断 | 一日の予定に担当者と相談先を書き込む |
| ③ 環境と連絡 | 出入口、過ごす場所、緊急時の連絡手順 | 現地で場所と備品を確かめ、責任者へ連絡する方法を試す |
| ④ 記録と情報共有 | 記録の目的、指定の保管先、共有する相手 | 架空の事例で、事実・対応・次の確認を書く |
| ⑤ 保護者との連携 | 連絡窓口、回答する範囲、確認してから返す内容 | その場で答えられない質問の引き継ぎを練習する |
| ⑥ 迷ったときの相談 | 誰へ、どの手段で、何を伝えるか | 見学で分からなかったことを一つ相談する |
既存の手順がある施設では、その手順を優先します。記載のない内容を新人の判断だけで補わせず、教室長や責任者が確認し、次に入る人も読める場所へ追記しましょう。研修を担当する人によって説明が変わるときは、その違い自体が運営を見直す材料になります。

説明・見学・練習・振り返りを、一つの流れにする
初日にすべてを覚えてもらうより、その日に担当する仕事に必要な内容から始めます。例えば、初めて活動の補助に入る人なら、担当者、開始前の準備、活動中の立ち位置、終了後の報告を一組として説明します。
「聞いた」を、次の行動につなぐ研修の流れ
目的と担当範囲を聞き、先輩の関わりを見る
架空の場面や、一部の仕事で確かめる
分かった点と迷った点を分け、次を決める
| 場面 | 新人が担当する範囲 | 先輩・責任者が担う範囲 |
|---|---|---|
| 活動の前 | 使用する物を準備し、不明点を確認 | 活動の目的、注意点、参加予定を説明 |
| 活動の中 | 決めた範囲の補助と、気づいたことの報告 | 全体の調整や、その場で必要な判断 |
| 活動の後 | 事実と自分が行った対応を記録 | 記録を一緒に読み、次に試すことを決める |
これは日数を固定した研修計画ではありません。経験がある人でも、その施設の方針や連絡方法は初めてです。反対に、説明を受けた回数が増えたことだけで、任せる範囲を自動的に広げるものでもありません。本人の理解と、その日の体制を見て調整します。
場面①「参加したくない」と言われたら、どう考える?
理念を日常の言葉に変える練習として、活動に参加したくない子がいる場面を考えてみましょう。「主体性を大切にする」という言葉だけでは、大人が何を確かめ、何を選べるようにするかまでは共有できません。
研修で話し合う架空の場面|編集部作成の例
場面:工作が始まる時間に、ある子が「今日はやらない」と話しました。
最初に考えること:参加させる方法をすぐ探すのではなく、本人が何を望んでいるか、見るだけの席や別の過ごし方があるかを確認します。施設の方針や、その場の状況を先輩と共有します。
声のかけ方の例:「今日は見るだけにする? 別の場所で過ごしたいなら、一緒に担当の人へ確認しよう」。言い方を暗記するより、この選択肢を出せる理由と、確認が必要な範囲を話し合います。
この例には、すべての場面に共通する正解のせりふがあるわけではありません。本人が話したくないとき、周囲との調整が必要なときなど、状況によって関わり方は変わります。新人だけで対応を決めず、見守る担当者と一緒に考えられることを大切にします。
タツロー校長がNIJINアカデミー池袋校を訪ねた公式動画には、興味のきっかけになる物を置く、という場づくりの話が出てきます。「教える内容」だけでなく「自然に関心を向けられる環境」を見る材料として、該当部分をご覧ください。
子どもの興味につながる、環境のつくり方を見る池袋校の公式訪問動画(5:08〜) ↗教室での関わりや環境を知るための事例紹介です。
場面② 記録では、事実・対応・次の確認を分ける
「楽しそうだった」「落ち着かなかった」といった感想だけでは、次の担当者は場面を思い浮かべにくくなります。研修では、個人情報のない架空の事例を使い、観察できたことと解釈を分ける練習をすると、記録の目的を共有しやすくなります。

短い活動記録の例|編集部作成の例
事実:工作の説明中は入口近くの席で見ていた。途中で「はさみを使いたい」と話し、担当者と材料を選んだ。
対応:見るだけでも過ごせることを伝え、道具を使うときは担当者へ声をかけるよう案内した。
次の確認:次回も同じ席を希望するか、本人へ確認する。道具を使う場面の担当者を活動前に決める。
実際の記録は施設で指定された様式と保管先を使います。研修資料へ実名や個別の相談内容を転記したり、個人のメモアプリへ持ち出したりすることを前提にしません。誰へ共有する必要があるか、どこまで閲覧できるかも、記録方法と一緒に説明してください。

場面③ 保護者への回答は、担当範囲を決めておく
活動後に保護者から「次回から参加回数を変えられますか」「在籍校へどのように伝えればよいですか」と聞かれることがあります。新人が答えを知らないこと自体より、確認のないまま約束してしまうことを避けたい場面です。
活動中に見た事実を伝えることと、契約や利用条件を説明すること、在籍校との調整を進めることは同じ仕事ではありません。その場で伝えてよい情報と、責任者へ引き継ぐ情報を、研修で分けておきます。
確認してから返答するときの例|編集部作成の例
「今日の活動中の様子は、担当者と記録を確認してお伝えします。利用日数の変更については窓口へ確認しますので、どなたから、いつご連絡するかを整理してご案内します」。分からないことを隠さず、確認先と返答の流れを一緒に伝えます。
「確認します」で終わらせないために、引き継ぐ相手、必要な情報、返答の担当を決めます。研修の練習でも、誰へ相談するかを実際に説明してもらうと、連絡網を渡すだけでは分からなかった点が見えてきます。
振り返りでは、できたことと次に相談することを一つずつ
活動後に長い反省会をする必要はありません。「何ができなかったか」だけを聞くより、本人が見た場面、試したこと、判断に迷った点を短く確認します。教える側も、目的や担当範囲の説明が十分だったかを振り返ります。

| 欄 | 書く内容の例 | 次につなげること |
|---|---|---|
| 分かったこと | 活動を始める前に担当者へ確認する場所が分かった | 次回も自分で確認できるか試す |
| 迷ったこと | 保護者の質問を誰へ渡すか迷った | 窓口と返答担当を一緒に確認する |
| 次にすること | 活動後の短い記録を担当者と一緒に書く | 任せる範囲と、確認する人を決める |
ここで「何日で一人前になるか」を一律に決める必要はありません。担当する仕事や勤務頻度が異なれば、確認できる場面も変わります。研修の終了日を決める場合も、終了後に相談できる相手と、確認の機会を残しておきましょう。
研修を終えることより、
迷ったときに相談できる関係をつくる。
勤務条件と研修の条件を、参加前にそろえる
研修の内容を決めたら、参加する人が無理なく受けられる条件も確認します。雇用、業務委託、ボランティアなど、関わり方が異なる人へ、同じ時間や仕事を当然のように求めないことが大切です。
- 参加が必要な日程・時間帯・場所を事前に伝えた
- 研修や準備、振り返りの時間と、給与・報酬等の扱いを確認した
- 実際に担当する仕事と、見学だけの範囲を分けた
- 欠席や日程変更、途中で難しいと感じたときの相談先を決めた
- 研修後も確認できる資料と窓口を用意した
契約の解釈や労務の判断を、新人や研修担当者だけで決めないようにします。判断が必要な点は、施設の責任者や担当窓口へ確認してください。募集の説明と研修の実際に違いがあるなら、そのまま進めず、参加する本人と条件をそろえ直します。
NIJINで、教室をつくる仕事を知る
NIJINアカデミーには、オンラインの先生に加え、地域にリアルな学びの場をつくる教室長の募集があります。この記事の研修案をそのまま採用することより、実際にどんな役割を担い、誰と連携する仕事なのかを知ることが、次の検討につながります。

地域に、もう一つの学びの場を
NIJINアカデミーのリアル校教室長
教室の運営や、子どもの学びに関わる仕事です。仕事内容、参加する時間、応募の条件は、現在の募集ページで確認できます。
教室長の仕事内容・募集条件を見る →役割分担を先に整理したい方は、次の記事も参考にしてください。「誰が担当するか」と「新人へどう伝えるか」を分けて考えると、研修で扱う内容を絞りやすくなります。

フリースクールのスタッフ研修で、よくある質問
初日に何から教えればよいですか?
教員経験があれば、研修は省略できますか?
何日間の研修が必要ですか?
全員に同じ研修をすればよいですか?
質問が出ないときはどうしますか?
実際の子どもの事例を、研修に使えますか?
ボランティアにも研修は必要ですか?
研修が終わっても不安が残る場合は?
まとめ|次の研修で、共有する一項目を選ぶ
スタッフ研修は、資料の量を増やすことではなく、施設で大切にする関わり方を、実際の仕事へつなぐための時間です。6項目を一度に仕上げるより、まずは次に入る人が担当する仕事を一つ選び、説明・見学・練習・振り返りの流れを考えてみましょう。
分からないことを一人で抱え込ませず、何を誰へ相談できるかを共有する。その関係を残せると、研修で見つかった疑問が、日々の運営をより良くする材料になります。
教室をつくる仕事から、次の一歩を
地域の子どもに、
学びの選択肢を届ける。
NIJINアカデミーのリアル校教室長の仕事を見てみませんか。
リアル校の教室長の募集を見る →ほかの役割は 募集ポジション一覧 で確認できます。あわせて読みたい|迎える前後の準備

参考情報・確認日:2026年10月26日
- 文部科学省・不登校児童生徒への支援の在り方について:本人の希望、支援の目的、関係者との連携の考え方。
- NIJINアカデミー・リアル校教室長の募集:仕事内容と応募案内。
研修案・表・図・会話・記録例は編集部作成です。各施設の方針や担当する仕事に合わせて調整してください。

