京都府出身の山﨑尚子さん。大学卒業後、塾講師として30年以上、多くの子どもたちや保護者と関わってきました。そのころから不登校の問題に取り組んできましたが、やがて我が子の不登校を経験します。
さまざまな居場所や支援の場を探す中で、子どもたちや保護者が本当に必要としている場所とはどんなところなのかを深く考えるように。「居場所だけでいいのか。将来への不安にはどう応えるのか」。その答えを探す中でNIJINに出会い、現在はNIJINアカデミー京都金閣寺校の教室長を務めています。
いまは、どのようなお仕事をしていますか?
NIJINアカデミーのリアル教室として、京都金閣寺校を開校しました。また、不登校の中学生の学習の悩みにも対応しています。
教室では、子どもたちの「好き」が未来を支える力になるという思いのもと、不登校の子どもたちが安心して過ごし、自分らしく学べる場をつくっています。実験やアート、調理、さまざまな体験学習など、子どもたちが「やってみたい」と思える活動を一緒に考え、取り組んでいます。
大切にしているのは、子どもの思いや興味を尊重すること。大人が「これをやりなさい」と決めるのではなく、子ども自身が選び、試し、時には失敗しながら学んでいけるように関わっています。一方で、今まで知らなかったことや、新しいことに挑戦するきっかけをつくることも大切にしています。
ニジンで働きたいと思ったきっかけは?
ここで働きたいと思った一番の理由は、「選べる」ということを大切にしている場所だったからです。
どんなことをするのか、どんなペースで進むのか、そして時には「今は選ばない」ということも含めて、子ども自身が選択できる。しかも、どの選択をしても誰かに責められることがない。その安心感に大きな魅力を感じました。
オンラインでつながれる環境があることで、自分の心理的安全性を守りながら、一人ひとりに合ったペースで少しずつ一歩を進めることもできます。そして、子どもが「やってみたい」と思ったときには、その気持ちを全力で応援してくれる。さらに、全国の子どもたちやさまざまな人とつながることで、学校や地域だけでは得られない視野や世界が広がっていく。
ニジンで働いて一番心動かされた出来事/エピソードを教えてください
とても正義感が強く、納得できないことがあると、その怒りを激しく表してしまう子がいました。一つのことに気持ちがとらわれると感情をコントロールすることが難しくなり、その状態が長く続くこともありました。周りの子どもたちも、そんな時には少し距離をとるようになっていました。
私は、まずその子が感じていることや考えていることを受け止めることを大切にしました。怒ること自体を否定するのではなく、「その気持ちは大切にしながら、どう伝えたら相手に届くのか、どう表したら自分も周りも過ごしやすいのか」を一緒に考えることを続けました。
ある時、ニュースを見て「許せない」と強い怒りを感じ、また感情にとらわれてしまったことがありました。でもその時、その子は自分から少しその場を離れ、落ち着いてからこちらへ戻ってきたのです。その姿を見た時、とても大きな成長を感じました。
仕事のむずかしさややりがいについて教えてください
NIJINアカデミーでの難しさは、一人ひとりの子どもと向き合うことに加え、さまざまな業務を柔軟に担うことが求められる点にもあります。子どもと関わることだけでなく、新しいことへの挑戦や、人とのつながりを広げることなど、求められる役割は多岐にわたります。
それぞれに意味がある一方で、すべてを一人で抱え続けるのではなく、得意なことや役割を分担しながら、それぞれが力を発揮できる環境も大切なのではないかと感じています。長く子どもたちに向き合っていくためにも、挑戦することと、無理なく続けられることの両方を大切にできる働き方が必要だと思います。
そして、仕事の本質的な難しさは、やはり子ども一人ひとりの思いをくみ取り、それを未来へつなげていくことです。その子が本当は何を望んでいるのか、何を伝えようとしているのか。言葉にならない思いも含めて真摯に向き合い、理解していくことは簡単ではありません。また、集団の中で、それぞれの思いを尊重しながら人と関わっていけるよう支えることにも難しさがあります。
これからニジンで挑戦したいことはなんですか?
これから挑戦したいのは、私自身も社会とのつながりをもっと広げていくことです。
これまで子どもたちと関わる中で、人との出会いや、学校や地域という枠を越えてさまざまな人とつながることが、子どもたちの世界を広げることにつながると感じてきました。一方で、私自身は日々の教室での関わりに集中するあまり、社会との接点を十分につくれていないと感じることもあります。
だからこそ、これからは企業や地域の方、さまざまな分野で活動している大人たちとつながり、子どもたちが実際の社会や多様な価値観に触れられる機会を増やしていきたいです。ただ人とつながるだけではなく、「こんな生き方があるんだ」「こんなことをしている人がいるんだ」と、子どもたちが新しい世界を知り、自分の「やってみたい」を見つけるきっかけをつくっていきたいと思っています。

