この記事では、小学校の先生ならではの経験の棚卸しのしかた、経験が生きる転職先の比べ方、在職中から年度末までの進め方を、国の統計や法令で確かめた事実をもとにまとめます。「辞めるのが正解」とは考えず、残る道・外へ出る道・両方に関わる道を並べて見ていきます。
目次
- 公立小学校で「転職のため」に離職した先生の人数(文部科学省の統計)
- 全教科・学級経営・保護者対応・低学年の生活指導を、転職で伝わる言葉にする方法
- 学童保育や児童指導員など、教員免許が資格の一つになっている仕事
- 中学校の免許を取る、専科になるなど、学校に残ったまま場所を変える道
- 在職中から年度末の退職までの進め方と、面接での伝え方
1小学校教員の転職先は?|先に結論
朝から下校まで子どもと一緒にいて、放課後は丸つけと次の日の準備。行事や保護者への連絡も重なります。そんな毎日の中で「小学校教員 転職」と検索したのは、この先の働き方を一度落ち着いて考えたいからかもしれません。先に結論をお伝えします。
- 転職先は3つの方向に分けて考えると整理しやすいです。学校の中で場所を変える(異動・専科・校種変更)、学校の外で子どもと関わる、教育の外で働く、の3つです。
- 小学校の先生の経験は、学校の外でも資格や強みになります。たとえば放課後児童支援員(学童保育)は、教員免許を持っていることが資格の要件の一つです(研修の修了も必要)。
- 転職は特別なことではありません。文部科学省の統計では、令和3年度の1年間に、公立小学校の先生2,098人が「転職のため」に離職しています。
- 進め方は「棚卸し→比べる→確かめる→伝える」の順です。年度末で辞める場合は、秋までに方向を決め、早めに管理職に相談すると引き継ぎがしやすくなります。
気持ちのつらさが先に立っているときは、小学校教員を辞めたい先生へを先に読んでみてください。この記事では、転職先と進め方の具体的な部分を中心に書きます。
2数字で見る、小学校の先生の転職
文部科学省の「学校教員統計調査」(令和4年度、確定値)には、公立小学校の先生が1年間にどんな理由で離職したかがまとめられています。令和3年度の1年間(令和3年4月1日〜令和4年3月31日)の数字は次のとおりです。
| 離職の理由 | 人数 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 定年(勧奨を含む) | 8,006人 | 離職者の半分あまりは定年によるもの |
| 転職のため | 2,098人 | 定年以外の理由では最も多い |
| 家庭の事情のため | 1,879人 | 子育て・介護などと重なる時期の離職 |
| 病気のため | 753人 | うち精神疾患によるものは569人 |
| その他(死亡・大学等入学・職務上の問題を含む) | 2,294人 | 死亡139人、大学等入学44人、職務上の問題111人、その他2,000人 |
| 合計 | 15,030人 | 前回調査(平成30年度間)より1,589人少ない |
「転職のため」の離職は、平成24年度間の1,318人、平成27年度間の1,501人、平成30年度間の1,715人と、調査のたびに増えてきました。学校の外へ仕事を移す小学校の先生は、毎年2,000人ほどいるということです。転職を考えること自体は、決して特別なことではありません。
一方で、この数字は「転職したほうがよい」という意味ではありません。同じ統計では、定年まで勤める先生がいまも最も多くいます。大切なのは、自分にとってどの道が合うかを、比べて選ぶことです。
出典:文部科学省「令和4年度学校教員統計(学校教員統計調査の結果)確定値を公表します」mext.go.jp(PDF)(離職の理由別 離職教員数〔公立小学校〕)
3小学校の先生ならではの経験を棚卸しする

転職を考え始めた先生から、「自分には教えること以外に何もできない」という声をよく聞きます。けれども、小学校の先生の毎日には、ほかの仕事でも求められる力がたくさん含まれています。まずは、学校の中の言葉で書き出し、それを外の人にも伝わる言葉に言い換えてみましょう。
小学校の先生ならではの4つの経験
中学校や高校の先生と比べたときに、小学校の先生の経験として目立つのは次の4つです。言い換えの例と、生きやすい仕事を並べます。
| 学校での経験 | 外の人に伝わる言い換え | 生きやすい仕事の例 |
|---|---|---|
| 全教科を教える | 幅広い内容を短い時間で理解し、相手に合わせて分かりやすく説明する力。毎日、複数の授業を組み立てる段取りの力 | 学習塾・家庭教師、教材づくり、社内研修、オンラインの先生 |
| 学級経営 | 30人前後の集団に、目標とルールをつくり、1年かけて育てる力。一人ひとりの変化に気づく観察力 | 学童保育、フリースクール、チームをまとめる仕事 |
| 保護者対応 | 立場や考えの違う大人と、信頼関係をつくりながら話を進める力。言いにくいことを伝える力 | 保護者と話す教育の仕事、相談・窓口の仕事、営業・顧客対応 |
| 低学年の生活指導 | 身の回りのことを一から教え、できるまで根気よく付き添う力。安全への目配り | 学童保育、児童福祉施設、1対1で子どもに伴走する仕事 |
このほか、行事の運営、校務分掌の書類づくり、学年の先生との打ち合わせなども、企画・事務・調整の経験として書けます。経験を企業の言葉に置き換えるコツは、教員の転職で伝わる強み・スキル7選にくわしくまとめています。
棚卸しのコツ:うまくいったことだけでなく、「苦しかったけれど続けられたこと」も書いてください。たとえば、毎日の連絡帳への返信を3年間続けたことは、ていねいなやりとりを続けられる力の証拠になります。
4経験が生きる転職先を3つの方向で比べる
転職先は、学校の中で場所を変える「残る道」、学校の外へ移る「外へ出る道」、先生を続けながら外とも関わる「両方に関わる道」の3つで比べると、自分に合うものが見えやすくなります。
| 方向 | 主な選択肢 | 生きる小学校の経験 | 確かめたいこと |
|---|---|---|---|
| 残る | 異動、専科(教科担任制)、中学校など校種を変える、ほかの自治体や私立の学校へ | 授業づくり、学級経営、そのまま全部 | 中学校の免許は、小学校での在職3年と大学での14単位で取る方法がある |
| 外へ出る(子どもと関わる) | 放課後児童支援員(学童保育)、児童福祉施設の児童指導員、学習塾・家庭教師、フリースクール、オンラインスクール | 低学年の生活指導、学級経営、全教科の指導 | 資格の要件、勤務時間(放課後・夕方中心の仕事もある)、収入 |
| 外へ出る(教育の外) | 教材・教育サービスの会社、研修・人材の仕事、営業・事務など | 説明する力、保護者対応、段取りと事務 | 未経験の仕事では、最初は覚えることが多い |
| 両方に関わる | 先生を続けながら、学びのコミュニティや学校の外の教育に関わる | 授業の経験を外で試せる | 公立の先生が報酬を得る場合は、兼業の許可が必要 |
教員の転職先全体を年代別・目的別に見たい方は教員の転職先一覧を、教員免許そのものを生かせる教育の仕事を10個くわしく見たい方は教員免許を活かせる仕事10選をご覧ください。ここでは、小学校の先生にとって特に関係が深いものを取り上げます。
残る道①|専科や高学年の教科担任として教える
文部科学省は、令和4年度から小学校高学年の教科担任制を進めるための先生の加配(定数の上乗せ)を行い、4年程度かけて段階的に進めるとしています。「全教科を担任として持つのは苦しいけれど、算数や理科を深く教えるのは好き」という先生は、専科や教科担任を希望する道もあります。配置は自治体と学校によって違うので、面談や自己申告で希望を伝えてみてください。
残る道②|中学校など、ほかの校種の免許を取る
教育職員免許法の別表第8には、持っている免許状を土台に、在職年数と大学での単位で隣の校種の免許状を取る方法が定められています。小学校の普通免許状を持つ先生が中学校の二種免許状を取る場合は、最低在職年数3年、大学で修得する単位は14単位です。幼稚園の二種免許状なら、在職3年と6単位です。手続きは都道府県の教育委員会が行う教育職員検定で、くわしい単位の内容は各都道府県の手引きで確かめてください。
外へ出る道|教員免許が資格の一つになっている仕事
学童保育で働く放課後児童支援員は、国の基準で、保育士や社会福祉士などと並んで「教育職員免許法に規定する免許状を有する者」が資格の要件の一つになっています。そのうえで、都道府県知事などが行う研修を修了することが必要です。1年生の生活指導で培った目配りが、そのまま生きる仕事です。
児童福祉施設で働く児童指導員も、国の基準で、幼稚園・小学校・中学校などの教諭の免許状を持ち、都道府県知事が適当と認めた人が資格の一つに挙げられています。どちらも勤務時間や待遇は施設ごとに違うので、求人票と面接で具体的に確かめてください。
出典:文部科学省「小学校高学年における教科担任制に関する事例集」(令和5年3月)mext.go.jp/e-Gov法令検索「教育職員免許法」(別表第8)laws.e-gov.go.jp/「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(第10条)laws.e-gov.go.jp/「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(第43条)laws.e-gov.go.jp
5在職中から年度末までの進め方

小学校の先生は担任を持つことが多く、年度の途中で抜けると子どもへの影響が大きくなります。そのため、年度末(3月31日)での退職を目安に、在職中から少しずつ進める先生が多いです。次の流れは、編集部が整理した一つの例です。
在職中に進めるときの3つのコツ
- 平日の夜と長期休みを使う。面接の日程は、放課後や夏休み・冬休みに合わせてもらえないか、早めに相談します。
- 「辞めるかどうか」と「どこへ行くか」を分けて考える。先に転職先を見てから決めても遅くありません。見てから「やはり学校に残る」と決める先生もいます。
- 家族と、お金の見通しを話しておく。収入が変わる時期の生活費を、数か月分ほど見積もっておくと落ち着いて選べます。
退職を伝える時期の考え方と、9月から3月までの準備は教員の退職はいつ言う?にまとめています。
6面接で「なぜ転職するのか」を伝えるとき
転職の面接では、ほぼ必ず「なぜ先生を辞めるのですか」と聞かれます。このとき、学校や同僚への不満を中心に話すと、「うちでも同じことで辞めるのでは」と受け取られやすくなります。「これから何をしたいか」を中心に話すのがコツです。
伝わりにくい言い方
「仕事量が多く、保護者対応も大変で、もう続けられないと思いました。」
伝わりやすい言い方
「担任として一人ひとりの変化に向き合う時間がいちばんやりがいでした。その時間をもっと持てる場所で、子どもに伴走したいと考えています。」
つらかった経験を隠す必要はありません。ただ、それを「何を大切にしたいかに気づいたきっかけ」として話すと、前向きな理由として伝わります。3章で書き出した「続けたいこと」が、そのまま志望の理由になります。
一人で整理しきれないときは、話しながら考える
棚卸しや面接の準備は、一人で進めると堂々めぐりになりがちです。教員のキャリアを専門にした相手と話しながら整理する方法もあります。
公式サイトによると、流れは「無料相談・ヒアリング」「プログラム体験」「自分で選ぶ」の3段階です。教育現場をよく知るプロコーチの伴走や、教員から民間企業へ移った先輩との面談・マッチングがあると書かれています。よくある質問には、転職するか決めていない段階でも相談でき、無理に転職をすすめないこと、平日の夜や土日に日程を合わせられること、秘密を守って対応することが書かれています。
7辞める前に確かめたい手続きとお金
転職先が決まっても、退職に関わる手続きは自分で確かめる必要があります。制度は自治体や勤め先によって違うため、ここでは「どこに確かめるか」を中心にまとめます。
- 退職手当(退職金):金額は勤続年数や退職の理由で変わります。見込み額は、勤め先の事務担当や教育委員会に確かめます。
- 共済組合の健康保険と年金:退職後の健康保険をどうするか(任意継続など)を、加入している共済組合に確かめます。
- 教員免許状:令和4年7月1日に免許更新制がなくなり、その時点で有効だった免許状は、手続きなしで有効期限のない免許状になりました。期限切れの心配がある方は、免許状を出した都道府県の教育委員会に確かめてください。
- 在職中の副業・兼業:公立の先生が報酬を得て外の仕事をするには、任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条)。教育に関する仕事は、本務に支障がないと認められれば従事できる場合があります(教育公務員特例法第17条)。
兼業の決まりのくわしい解説は教員は副業できる?をご覧ください。私立小学校の先生は、勤め先の就業規則が基準になります。
出典:大阪府「教員免許更新制の発展的解消について」pref.osaka.lg.jp/e-Gov法令検索「地方公務員法」(第38条)laws.e-gov.go.jp/「教育公務員特例法」(第17条)laws.e-gov.go.jp
8学校の外で、自分のやりたい教育をする道

3つの方向を並べたうえで、「学校の外で、自分のやりたい教育をする」選択肢の一つとしてNIJINを紹介します。NIJINは、不登校や学校が合わない小中学生が学ぶ「NIJINアカデミー」などを運営する会社です。採用サイトによると、代表の星野は小学校教諭として7年間子どもと向き合い、2022年に創業しました。ミッションは「人を責めず、仕組みを創る。」です。NIJINアカデミーのリアル教室は、全国に52か所あります。
学校の外にも、子どもと向き合う教育の場が広がっています。NIJINがどんな考えで学びの場をつくっているかを、タツロー校長のチャンネルの動画で紹介します。
▶NIJINアカデミーの先生は、インターネット上の校舎(メタバース校舎)で8人の少人数クラスを担任する仕事です。完全フルリモートで、週3日から働けます。必須の時間帯は平日10時〜11時(週3日)と水曜12時〜13時30分です。給与の目安は月20万円〜70万円(フルコミットの場合)。在宅で週数日なら月5万円程度からです。学級経営の経験を、8人のクラスで一人ひとりにより深く向き合う形で生かせます。このほか、1対1で子どもに伴走する専任サポートなど、ほかの関わり方は募集職種一覧で確かめられます。
学校に残る道を選ぶ先生にも、外の仲間はつくれます。授業てらすは、小学校の先生が授業力を磨くオンラインコミュニティです。自分の授業動画を投稿してフィードバックを受けたり、少人数で教科や日々の悩みについて語り合ったりできます。
良いことだけではありません。学校の外では、決まった仕組みがない分、自分で考えて動く場面が増えます。外へ出れば楽になる、とは約束できません。公立学校に在職したまま関わりたい方は、7章の兼業の決まりを先に確かめてください。
小学校の先生から、学校の外で教育をしている人の声

せれんさん
公立小学校で算数専科や3〜6年生の担任を経験し、教員5年目で退職/メタバース担任・企業連携マネージャー
「教員が、他の仕事もしながら教育ができれば、最強になれるのでは?」
インタビューによると、せれんさんはフリーランス教師としてNIJINに加わり、メタバース担任のほか、企業連携やWEB制作も担っています。担任の仕事と社会での挑戦を両立する働き方です。

きょーこさん
小学校教員を14年(うち2年はJICA海外協力隊)/NIJINアカデミー リアル教室 横浜泉校 教室長
「かけがえのない瞬間に携われることに、とても大きなやりがいを感じています」
きょーこさんは、教室で緊張していた子が、少しずつ自分の言葉で思いを語れるようになるまでを見守ってきたと話しています。いまは教室長のほか、小学校の非常勤講師なども兼ねています。
9よくある質問
小学校教員の転職先には、どんなものがありますか?
小学校の先生におすすめの転職先は?
小学校の先生の経験は、企業でも評価されますか?
転職するなら、いつ辞めるのがよいですか?
小学校から中学校の先生になることはできますか?
辞めたら教員免許は使えなくなりますか?
先生を続けながら、学校の外の教育に関わることはできますか?
10まとめ|経験を言葉にしてから、道を選ぶ
小学校教員の転職先は、学校の中で場所を変える道、学校の外で子どもと関わる道、教育の外の道に分けられます。全教科を教え、学級をまとめ、保護者と向き合い、低学年の子に一から教えてきた経験は、言い換えればどこでも伝わる力です。
- この1年の経験を、授業・学級・保護者・校務に分けて書き出した
- 学校の言葉を、だれにでも伝わる言葉と数に言い換えた
- 残る・外へ出る・両方に関わるの3つを並べて比べた
- 資格の要件や兼業の決まりを、公式の資料や窓口で確かめた
- 年度末を目安に、管理職へ伝える時期を考えた
どの道を選んでも、確かめて自分で選んだのなら、それが答えです。子どもと向き合ってきた日々は、次の場所でも必ず生きます。
自分のやりたい教育ができる場所は、学校の外にもあります。
8人のクラスや1対1で、子ども一人ひとりと向き合う道です。
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- e-Gov法令検索「教育職員免許法」laws.e-gov.go.jp/「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」laws.e-gov.go.jp/「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」laws.e-gov.go.jp
- e-Gov法令検索「地方公務員法」laws.e-gov.go.jp/「教育公務員特例法」laws.e-gov.go.jp/大阪府「教員免許更新制の発展的解消について」pref.osaka.lg.jp
- 先生キャリアコーチ senseicoach.nijin.co.jp/授業てらす jugyoterrace.nijin.co.jp/NIJIN 採用サイト nijin.co.jp/recruit//NIJINアカデミーの先生/募集職種一覧


