「辞めたら退職金はいくらもらえるのだろう」。この記事では、法律の条文と国税庁・東京都などの公式情報で確かめられたことだけをもとに、退職金の計算の考え方、勤続年数ごとの割合、自己都合で辞める場合の注意点、税金の基本を整理します。ネット上の「平均◯◯万円」という数字ではなく、自分で確かめるための道具をお渡しします。
目次
- 教員の退職金が何で決まるか(給料月額・勤続年数・退職理由)
- 国家公務員の法律にもとづく、勤続年数ごとの割合の早見表(自己都合)
- 自己都合で辞めると、割合と調整額がどう変わるか
- 退職金にかかる税金の基本(退職所得控除)
- 臨時的任用・私立学校の先生が確かめること
- 退職金だけに頼らない、辞めたあとのお金と働き方の考え方
1教員の退職金は何で決まる?計算のしくみ
最初に、仕組みの全体を押さえます。
公立学校の教員の退職金は「条例」で決まる
公立学校の先生は地方公務員です。退職金(正式には退職手当)は、勤めている都道府県や政令指定都市の条例にもとづいて支給されます。たとえば東京都教育委員会の資料には、退職手当は「職員の退職手当に関する条例等に基づいて支給している」と書かれています。
出典:東京都教育委員会の資料(第9章 福利厚生)kyoiku.metro.tokyo.lg.jp
つまり、「教員の退職金は全国一律でいくら」という答えはありません。自治体ごとに条例があり、割合や計算の細かいところが違うことがあります。
計算の型は、国家公務員の法律で確かめられる
とはいえ、手がかりが無いわけではありません。国家公務員の退職手当は「国家公務員退職手当法」という法律で決まっていて、条文は誰でも読めます。この記事では、この法律を「計算の型」の例として使います。
法律の条文から読み取れる型は、次のとおりです。
出典:国家公務員退職手当法 第3条・第6条の4・附則第6項(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
ポイント 退職金のもとになるのは「年収」ではなく「退職日の給料月額」です。そして、割合は勤続年数に比例して増えるのではなく、年数の区切りごとに上がり方が変わります。

2勤続年数ごとの割合|国の法律にもとづく早見表(自己都合・定年)
では、勤続年数ごとの割合を見ていきます。ここからの数字は、国家公務員退職手当法の条文に書かれた割合を、そのまま掛け合わせたものです。
条文に書かれている割合
第3条第1項は、勤続期間を区切って、1年ごとの割合を次のように定めています。
- 1年以上10年以下の期間:1年につき100分の100
- 11年以上15年以下の期間:1年につき100分の110
- 16年以上20年以下の期間:1年につき100分の160
- 21年以上25年以下の期間:1年につき100分の200
- 26年以上30年以下の期間:1年につき100分の160
- 31年以上の期間:1年につき100分の120
そして第3条第2項で、自分の都合で退職した人については、上で計算した額に次の割合をかけるとしています。
- 勤続1年以上10年以下:100分の60
- 勤続11年以上15年以下:100分の80
- 勤続16年以上19年以下:100分の90
さらに附則第6項で、当分の間、勤続35年以下の人の基本額には100分の83.7をかけるとされています。
早見表|自己都合で退職した場合の基本額の割合
上の3つを掛け合わせると、次の表になります。「給料月額の何か月分にあたるか」の目安として見てください。
| 勤続年数 | 計算(条文の割合) | 基本額の割合(給料月額に対して) | 調整額(自己都合の場合) |
|---|---|---|---|
| 1年 | 1 × 0.6 × 0.837 | 0.5022(約0.5か月分) | なし |
| 3年 | 3 × 0.6 × 0.837 | 1.5066(約1.5か月分) | なし |
| 5年 | 5 × 0.6 × 0.837 | 2.511(約2.5か月分) | なし |
| 10年 | 10 × 0.6 × 0.837 | 5.022(約5.0か月分) | 計算した額の2分の1 |
| 15年 | (10 + 1.1×5)× 0.8 × 0.837 | 10.3788(約10.4か月分) | 計算した額の2分の1 |
| 20年 | (10 + 1.1×5 + 1.6×5)× 0.837 | 19.6695(約19.7か月分) | 計算した額の2分の1 |
国家公務員退職手当法 第3条・第6条の4・附則第6項の割合から計算。これは国家公務員についての法律で、公立学校の教員の実際の割合は自治体の条例で決まります。必ず所属の教育委員会か学校の事務担当に確認してください。
表から読み取れる3つのこと
- 10年までは、ゆるやかに増える:自己都合では、1年あたり給料月額の約0.5か月分ずつです。
- 11年目・16年目で上がり方が変わる:10年から15年で割合は約2倍、15年から20年でさらに約2倍になります。
- 20年で第3条第2項の引き下げがなくなる:自己都合の割合(60%・80%・90%)がかかるのは勤続19年以下です。なお、定年などで退職する場合は、別の条文で割合が定められています(下の早見表)。
早見表|勤続20〜40年:自己都合と定年などの比較
定年などで退職する場合は、自己都合とは別の条文(第4条・第5条)の割合を使います。国(内閣官房内閣人事局)が公表している「国家公務員退職手当支給率早見表」から、勤続20年以上の数字を抜き出しました。どれも調整率(100分の83.7)をかけた後の、給料月額に対する割合です。
| 勤続年数 | 自己都合(第3条) | 定年など(20年は第4条、25年以上は第5条) |
|---|---|---|
| 20年 | 19.6695(約19.7か月分) | 24.586875(約24.6か月分) |
| 25年 | 28.0395(約28.0か月分) | 33.27075(約33.3か月分) |
| 30年 | 34.7355(約34.7か月分) | 40.80375(約40.8か月分) |
| 35年 | 39.7575(約39.8か月分) | 47.709(約47.7か月分) |
| 38年 | 42.7707(約42.8か月分) | 47.709(約47.7か月分) |
| 40年 | 44.7795(約44.8か月分) | 47.709(約47.7か月分) |
出典:内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」(PDF)。「定年など」は、定年・応募認定退職(一号)・任期終了・事務都合退職などの列です。基本額の割合で、調整額は含みません。公立学校の教員の実際の割合は、自治体の条例で決まります。
- 定年などで勤続35年に届くと、約47.7か月分で頭打ち:早見表では、35年以上は何年勤めても同じ割合です。
- 自己都合は勤続43年まで少しずつ増える:早見表では、自己都合は勤続43年で47.709に届きます。
- 同じ20年でも、退職の理由で約5か月分ちがう:自己都合は19.6695、定年などは24.586875です。
計算の例(仮の金額)
イメージをつかむために、仮の給料月額で計算してみます。金額は説明のための仮のもので、実際の給料や退職金を示すものではありません。
| 仮の条件 | 国の法律の割合での計算 |
|---|---|
| 勤続5年 | 仮に給料月額が28万円なら、28万円 × 2.511 = 703,080円(調整額はなし) |
| 勤続10年 | 仮に給料月額が32万円なら、32万円 × 5.022 = 1,607,040円。これに、調整額の2分の1が加わる |
自分の場合を知るには、給与明細の「給料」(手当を含まない本体の月額)と勤続年数を確かめ、所属の自治体の割合を事務担当に聞くのが確実です。
3自己都合で辞める場合に知っておきたいこと
20〜30代で退職を考える先生は、ほとんどが「自己都合」にあたります。知っておきたい点を整理します。
| 項目 | 国家公務員退職手当法で確かめられること | 自分で確かめること |
|---|---|---|
| 基本額の割合 | 自己都合では、勤続1〜10年は60%、11〜15年は80%、16〜19年は90%をかける | 自治体の条例での割合 |
| 調整額 | 自己都合で勤続9年以下は零。勤続10年以上24年以下は、計算した額の2分の1 | 自分の職の区分と、自治体での扱い |
| 休職した期間 | 調整額の計算では、休職などで現実に職務をとらなかった月のうち、政令で定めるものを除く | 休職・休業の期間が勤続期間にどう数えられるか |
| 退職後に仕事がない場合 | 退職手当の額が、雇用保険の基本手当に相当する額に満たないとき、条件を満たせば差額を支給する仕組みがある(第10条) | 自治体の条例に同じ仕組みがあるか。手続きの窓口 |
「自己都合」と「病気による退職」は扱いが違うことがある
国家公務員退職手当法の第3条第2項は、自己都合の割合をかける対象を「傷病又は死亡によらず」自分の都合で退職した人としています。つまり、病気やけがによる退職は、条文の上では自己都合の引き下げの対象から外れています。
心身の不調で退職を考えている場合、どの区分にあたるかで額が変わる可能性があります。ただし、区分の判断は任命権者が行うもので、この記事では判断できません。自治体の条例での扱いも含めて、所属の教育委員会に確認してください。休む制度については、教員の休職ガイドにまとめています。
年度の途中で辞めても、計算の型は同じ
国の法律を読むかぎり、退職手当は退職日の給料月額と勤続期間、退職の理由から計算する仕組みで、年度末かどうかで決まるものではありません。年度途中の退職のルールは、教員は年度途中で退職できる?の記事で整理しています。
4退職金にかかる税金の基本
退職金は、ほかの給料とは別の計算で税金がかかります。国税庁の案内で確かめられる基本は次のとおりです。
| 項目 | 国税庁の案内(令和8年4月1日現在の法令) |
|---|---|
| 退職所得の計算 | (収入金額 − 退職所得控除額)× 2分の1 = 退職所得の金額 |
| 控除額(勤続20年以下) | 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 控除額(勤続20年超) | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
| 手続き | 「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、支払者が税額を計算して源泉徴収する |
出典:国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」nta.go.jp
たとえば勤続5年なら、控除額は40万円 × 5年で200万円です。退職金が控除額より少なければ、式の上では退職所得の金額は0になります。
ただし、税金の扱いは個別の事情で変わります。この記事では断定しません。申告書の出し方は学校の事務担当に、税金の詳しいことは税務署に確認してください。住民税や、退職後の健康保険・年金の負担も、退職前に市区町村などの窓口で確かめておくと安心です。

5臨時的任用・私立学校の先生の場合
ここまでの説明は、公立学校の正規の教員を念頭に置いたものです。身分が違う場合は、確かめる相手が変わります。
| 身分 | 退職金のよりどころ | 確かめる相手 |
|---|---|---|
| 公立学校の正規教員 | 都道府県・政令指定都市の退職手当に関する条例 | 所属の教育委員会、学校の事務担当 |
| 公立学校の臨時的任用教員・会計年度任用職員など | 自治体の条例。任用の形や勤務した期間によって、支給されるかどうか・計算のしかたが違うことがある | 所属の教育委員会、学校の事務担当 |
| 私立学校の教員 | 学校法人の退職金の規程(就業規則など) | 勤務先の事務担当、就業規則 |
臨時的任用や私立学校の先生の退職金について、この記事では個別の金額や割合を確認していません。任用の通知、就業規則、退職金の規程を手元で確かめ、分からない点は事務担当に聞いてください。
6自分の退職金を確かめる4つの手順
- 給料月額を確かめる:給与明細で、手当を含まない「給料」の月額を見ます。
- 勤続年数を数える:採用の日から数えます。休職や休業の期間がある場合は、数え方を事務担当に確認します。
- 自治体の割合を聞く:学校の事務担当か教育委員会に、「自己都合で◯年◯月に退職した場合の退職手当の見込み」を聞きます。
- 手取りと使い道を考える:税金、退職後の保険料や住民税を引いたうえで、何か月分の生活費になるかを計算します。
「退職を考えていると知られたくない」という場合は、自治体が公開している条例(例規集)を自分で読む方法もあります。東京都のように、例規集をインターネットで公開している自治体もあります。
7退職金だけに頼らない|辞めたあとのお金と働き方
早見表を見て、「思ったより少ない」と感じた方もいるかもしれません。20〜30代での自己都合の退職では、退職金は「次の生活を何年も支えるお金」ではなく、「次の働き方に移るまでの橋」と考えるのが現実的です。
だからこそ、退職金の額と同じくらい、「辞めたあと、どう収入を得るか」が大切になります。道は大きく3つあります。
残る道・両方に関わる道
教員を続けながら、次の準備をする。勤続年数が増えれば退職金の割合も上がります。許可を得てできる教育の活動で、学校の外に足場をつくる方法もあります(教員の副業のルール)。
外へ出る道
退職して、別の仕事や学校の外の教育の仕事へ移る。退職金を橋にして、次の収入の柱を早めに立てます(教員の転職先の一覧)。
学校の外で教育を続ける働き方の例
NIJINは、学校が合わない小中学生のためのオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」などを運営する教育の会社です。働き方の例を、募集ページに載っている範囲で紹介します。
- NIJINアカデミーの先生:在宅で、週3日から。必須の時間帯は平日10:00〜11:00を週3日と水曜12:00〜13:30。給与の目安は月20万円〜70万円(フルコミットの場合。担当する仕事の組み合わせで決まります)
- NIJINアカデミー リアル校の教室長:全国52か所(開校予定含む)のリアル教室の一つを運営する仕事。週1日から、教員免許は不要
- 正社員:年収600万円スタートと800万円スタートの2種類の募集があります(求める水準は高く、ジョブ型です)
いずれも、収入を約束するものではありません。条件の詳細は選考と契約のときに個別に示されます。ほかの職種は募集職種の一覧で見られます。
学校を離れたあと、教育を続けている先生の声

繁野 小智さん
通称:さっちー/私立・公立高校の教員を7年 → 出産を機に退職 → NIJINアカデミー・NIJIN高等学院 クラス担任
さっちーさんは、私立・公立の高校で7年間教員を務めたあと、出産を機に退職しました。インタビューでは、いまの仕事をこう話しています。「現在はプログラミング講師として働きながら、NIJINアカデミー・NIJIN高等学院のスタッフとしてクラス担任を担当しています。」
一つの仕事だけに頼らず、教育に関わる仕事を組み合わせる働き方の一例です。インタビュー記事を読む
小学校教員を14年間務めた、きょーこさんも、いまはリアル教室の教室長と小学校の非常勤講師などを兼務しています(インタビュー)。


8よくある質問
教員の退職金は、勤続10年でいくらですか?
3年目や5年目で辞めても、退職金は出ますか?
自己都合だと、退職金はどのくらい減りますか?
退職金の早見表は、自分の自治体にも当てはまりますか?
退職金に税金はかかりますか?
休職していた期間は、退職金の計算に入りますか?
臨時的任用教員や非常勤講師にも、退職金はありますか?
退職金はいつ振り込まれますか?
教員の退職金の平均はいくらですか?
教員の退職金の早見表は、どこで確認できますか?
小学校教員の退職金は、中学校や高校の教員と計算のしくみが違いますか?
教員の退職金は、勤続年数に比例して増えますか?
勤続35年・40年の教員の退職金は、給料の何か月分ですか?
Q. 勤続25年・30年の教員の退職金は、どのくらいになりますか?
A. 長く勤めて定年などで退職する場合は、この記事の早見表(自己都合・勤続1〜20年)よりも高い割合が使われます。それでも計算の型は同じで、「退職日の給料月額 × 勤続年数と退職理由で決まる割合 + 調整額」です。給料月額と割合は自治体の条例で決まるため、6章の4つの手順で、自分の給与明細と自治体の条例から確かめるのがいちばん確実です。
9まとめ|金額を知ってから、落ちついて決める
教員の退職金は、退職日の給料月額に、勤続年数と退職理由で決まる割合をかけ、調整額を足して決まります。国家公務員の法律の割合では、自己都合の場合、勤続5年で給料月額の約2.5か月分、10年で約5.0か月分、15年で約10.4か月分、20年で約19.7か月分です。実際の額は自治体の条例によります。
大切なのは、うわさの数字ではなく、自分の給料月額と自治体の規定で確かめること。そして、退職金を「次の働き方へ渡る橋」として、辞めたあとの収入の見通しとあわせて考えることです。
続けることも、離れることも、どちらも立派な選択です。数字を知ったうえで選べば、どちらを選んでも納得のいく決断になります。
辞めたあとの仕事の探し方は教員の転職ガイド(転職先・進め方・時期)、辞めた人の実感は教員を辞めてよかった?元教員の声で見る得たもの・手放したものも参考になります。
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- 東京都教育委員会の資料(第9章 福利厚生)kyoiku.metro.tokyo.lg.jp
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」nta.go.jp
- NIJIN 採用サイト nijin.co.jp/recruit//「NIJINアカデミーの先生」nijin.co.jp/「リアル校の教室長」nijin.co.jp
- 社員インタビュー(さっちーさん)nijin.co.jp/(きょーこさん)nijin.co.jp


