この記事では、「教員 大学院 進学」で調べている先生に向けて、休業や派遣の制度の条件、働きながら通える大学院の例、授業料と休業中のお金、申請の流れを、法令や文部科学省・教育委員会・大学の公式情報で確かめてまとめます。「辞めるのが正解」とは考えず、学校に残って学ぶ道、辞めて学ぶ道、学びを学校の外で生かす道を並べて見ていきます。
目次
- 大学院修学休業・自己啓発等休業・派遣研修の違い(期間・給与・条件)
- 大学院で学ぶために休業している公立学校の先生の人数(文部科学省の調査)
- 夜間・オンライン・長期履修で、働きながら通える教職大学院の例
- 国立大学の大学院の授業料の標準額と、休業中に必要なお金
- 受験の前に教育委員会へ相談するなど、入学までの進め方
1教員が大学院で学び直すには?|先に結論
授業や学級のことで「経験だけでは説明しきれない」と感じたとき、もっと学びたいと思うのは自然なことです。先に結論をまとめます。
- 在職のまま休んで学ぶ制度が2つあります。専修免許状を取るための「大学院修学休業」(最長3年)と、大学などで学ぶための「自己啓発等休業」です。どちらも身分は残りますが、休業中の給与はありません。
- 給与を受けながら学ぶ道もあります。教育委員会が選んだ先生を大学院へ送る「派遣研修」です。推薦と選考があります。
- 休まずに通える大学院も増えています。夜間やオンラインの授業、3〜5年かけて学ぶ長期履修の仕組みを持つ教職大学院があります。
- 国立大学の大学院の授業料は、国の標準額で年535,800円です。入学料282,000円と合わせると、2年間で135万円あまりになります。
- どの道でも、受験の前に教育委員会(任命権者)へ相談します。合格しても休業が許可されないことがあるためです。
2数字で見る、大学院で学ぶ先生
文部科学省は、大学院などで学ぶために休業している公立学校の先生の人数を調べています。令和6年4月1日の時点で休業していた先生は次のとおりです(新しく休業した人と続けている人の合計)。
| 区分 | 人数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 合計 | 173人 | 大学院修学休業68人、自己啓発等休業98人、自治体独自の休業7人 |
| 学校の種類別 | — | 小学校64人、中学校43人、高等学校52人、特別支援学校14人 |
| 年齢別 | — | 30歳以下28人、31〜35歳28人、36〜40歳43人、41〜45歳31人、46歳以上43人 |
| これまでの推移 | — | 平成22年度は204人、令和4年度は142人 |
人数は多くありませんが、35歳以下の先生が56人と、全体の3分の1ほどを占めています。20代・30代で大学院に進む先生は、特別な存在ではありません。なお、この数字には、給与を受けて学ぶ派遣研修の先生や、休まずに夜間などで通う先生は含まれていません。
出典:文部科学省「大学院修学休業制度」mext.go.jp(「最新の休業状況(令和6年4月1日現在)」PDF、「近年の休業者数推移」PDF)
3大学院に行くべき?目的から考える

「大学院に行くべきか」は、何を持ち帰りたいかで答えが変わります。目的によって、使える制度も合う大学院も違うからです。まず次の3つのどれに近いかを考えてみてください。
教職大学院は、学校の中核となる先生の養成と研修の場として設けられた専門職大学院です。標準の修業年限は2年で、45単位以上の修得が修了の要件です。そのうち10単位以上は学校での実習ですが、教職経験があれば10単位の範囲で免除される場合があります。修了すると「教職修士(専門職)」の学位を受け、専修免許状を取ることができます。
専修免許状だけが目的なら、大学院に入らない方法もあります。教育職員免許法の別表第3では、たとえば小学校の一種免許状を持つ先生が、在職3年と大学での15単位の修得で専修免許状を受けられると定めています。専修免許状で給与がどう変わるかは、自治体の給与の決まりで確かめてください。
迷ったときの3つの問い:①学んだことを、どこで、だれのために使いたいか。②1〜3年、給与のない生活を続けられるか。③修了後は学校へ戻るのか、まだ決めていないのか。③が決まっていなくても、①と②に答えられれば、合う制度を選べます。
出典:文部科学省「教職大学院:制度の概要について」mext.go.jp/e-Gov法令検索「教育職員免許法」(別表第3)laws.e-gov.go.jp
目的が言葉にならないときは、話しながら整理する
「学びたい気持ちはあるけれど、何を学びたいのか分からない」。そんなときは、教員のキャリアを専門にした相手と話しながら整理する方法もあります。
公式サイトによると、流れは「無料相談・ヒアリング」「プログラム体験」「自分で選ぶ」の3段階です。よくある質問には、転職するか決めていない段階でも相談でき、無理に転職をすすめないこと、平日の夜や土日に日程を合わせられること、秘密を守って対応することが書かれています。
4在職のまま学ぶ制度を比べる|修学休業・自己啓発等休業・派遣
公立学校の先生が、身分を保ったまま大学院で学ぶ方法を比べます。条件は自治体ごとに違うので、表の「例」は一つの自治体の決まりです。
| 方法 | 何のため | 期間 | 身分・給与 | 主な条件 |
|---|---|---|---|---|
| 大学院修学休業 | 専修免許状を取る | 1年・2年・3年(年単位) | 身分は保有。給与は支給されない(期末・勤勉手当も) | 一種免許状か特別免許状を持ち、最低在職年数(3年)を満たす。任命権者の許可 |
| 自己啓発等休業 | 大学などの課程の履修、または国際貢献活動 | 3年を超えない範囲で条例が定める | 職は保有。給与は支給されない | 条例で定める。例:滋賀県は在職3年以上 |
| 大学院への派遣研修 | 教育委員会が選んだ先生が、現職のまま研修として学ぶ | 例:北海道は道外の大学院2年、道内の教職大学院は原則1年 | 研修出張の扱い。例:高知県は給料と諸手当を支給 | 推薦と選考。例:北海道は教職経験5年以上 |
| 休まずに通う | 勤務を続けながら学ぶ | 例:3〜5年の長期履修 | ふだんどおり勤務 | 大学院の出願資格。勤務校の理解(所属長の許可を求める大学院もある) |
大学院修学休業|専修免許状を取るための休業
教育公務員特例法第26条から第28条に定められた制度で、平成13年度から始まりました。条件付採用期間中の人、臨時的に任用された人、初任者研修を受けている人などは対象外です。文部科学省のQ&Aでは、次の点も示されています。
- 法律上の条件を満たしていても、教職員の定数の管理に支障があるときは、許可されない場合がある。
- 外国の大学院も対象になりうるが、都道府県の教育委員会の判断が必要なので、必ず事前に確かめる。
- 休業中も共済組合の組合員の資格は続き、掛金は支払う。
- 休業中のアルバイトは、任命権者が認める場合に、学びに支障のない範囲でできる。
- 復職したときの給与の調整や退職手当の扱いは、自治体ごとに決まる。
たとえば大阪市の要綱では、休業は原則4月1日から3月31日までで、書類と面接による審査があります。復職後は、速やかに専修免許状の交付を申請することになっています。
自己啓発等休業|専修免許状が目的でなくてもよい
地方公務員法第26条の5に定められた、公務員全体の制度です。「大学等課程の履修」か「国際貢献活動」のための休業で、専修免許状の取得が目的でなくても使えます。心理や福祉、海外の大学院など、教育以外の分野を学びたい先生には、こちらが合う場合があります。期間や対象の学校、延長のしかたは各自治体の条例で決まります。滋賀県の条例では、在職3年以上の職員が対象で、期間は3年以内、延長は原則1回までです。
国際貢献活動の例にはJICA海外協力隊があります。海外に目が向いている方は、教員のワーホリ|辞める・休む・戻る道もあわせてご覧ください。
大学院への派遣研修|給与を受けながら学ぶ
教育公務員特例法第22条第3項は、先生が「現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる」と定めています。これにもとづいて、教育委員会が先生を大学院へ送るのが派遣研修です。大学院修学休業とは別の制度です。
北海道教育委員会の要項では、教職経験5年以上(うち北海道の公立学校で3年以上)で、校長などの推薦を受けた先生が対象です。高知県の令和10年度の募集要項では、派遣中に給料や諸手当を支給する一方、入学料と授業料は本人の負担(予算の範囲で県が一部を負担する予定)としています。修了後5年以内に離職した場合は、県が負担した費用を返すという決まりもあります。派遣は、修了後に地域や学校で中心となって働くことが期待される制度です。
出典:e-Gov法令検索「教育公務員特例法」(第22条・第26条〜第28条)laws.e-gov.go.jp/「地方公務員法」(第26条の5)laws.e-gov.go.jp/文部科学省「大学院修学休業制度QA」mext.go.jp/大阪市教育委員会「大学院修学休業の実施に関する要綱」PDF/滋賀県「職員の自己啓発等休業に関する条例」pref.shiga.lg.jp/北海道教育委員会「大学院研修派遣について」dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/高知県「大学院派遣教員募集について」pref.kochi.lg.jp
5働きながら通う方法|夜間・オンライン・長期履修

大学院設置基準第14条は、教育上特別の必要があるとき、夜間など特定の時間や時期に授業を行えると定めています。この仕組みを使って、現職の先生が休まずに学べる教職大学院があります。公式サイトに書かれている例を紹介します。
働きながら学ぶときにいちばん大切なのは、時間の見通しです。夕方以降の授業、課題、研究の時間が、毎週の仕事と行事に重なります。学校での実習を勤務校で行う大学院もあるため、管理職や同僚の理解も欠かせません。3〜5年の長期履修を選び、1年あたりの負担を軽くする方法もあります。
出典:e-Gov法令検索「大学院設置基準」(第14条)laws.e-gov.go.jp/各大学の公式サイト(上記リンク)。条件は年度で変わることがあるため、最新の募集要項で確かめてください。
6費用はいくら?授業料と休業中のお金
大学院の費用は、授業料・入学料などの「学費」と、休業する場合の「暮らしのお金」に分けて考えます。学費は公式に示された金額を並べます。
| 例 | 入学料 | 授業料 | 2年間の目安 |
|---|---|---|---|
| 国立大学の大学院(国の標準額) | 282,000円 | 年535,800円 | 1,353,600円(入学料+授業料2年分の計算。ほかに検定料30,000円) |
| 東京学芸大学 大学院(令和8年度) | 282,000円 | 年535,800円 | 標準額と同じ。長期履修なら年額は2年分を3か4で割った額 |
| 放送大学大学院 修士全科生(2026年度以降の入学、臨床心理学以外) | 48,000円 | 1単位12,000円+研究指導料 年48,000円 | 最短2年で53.4万円(大学が示す目安。教職大学院ではない) |
| 私立大学の大学院 | 大学・研究科ごとに大きく違います。各大学の募集要項で確かめてください。 | ||
出典:e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」(第2条)laws.e-gov.go.jp/東京学芸大学「学費」u-gakugei.ac.jp/放送大学「学費(授業料、入学料)大学院 修士課程」ouj.ac.jp
休業中の暮らしのお金
大学院修学休業も自己啓発等休業も、休業中の給与はありません。文部科学省のQ&Aでは、期末・勤勉手当などの諸手当も支給されないと説明されています。そのうえ、共済組合の掛金は休業中も支払います。学費に加えて、1〜3年分の生活費と掛金の見通しを、家族と一緒に数字で立てておきましょう。
費用を支える仕組み
- 奨学金・貸付:文部科学省のQ&Aは、日本学生支援機構の奨学金や、共済組合の貸付などを挙げています。条件は各機関で確かめます。
- 奨学金の返還免除(教員免除):大学院で第一種奨学金を借り、特に優れた業績を挙げ、修了の翌年度から正規の教員として採用される予定の人が申請できる制度です。いま正規の先生として休業して通う人が対象になるかは、大学の窓口で確かめてください。
- 専門実践教育訓練給付金:東京学芸大学の教職大学院は対象講座に指定されています。給付は教育訓練の経費の50%(年間上限40万円)からで、受け取るには一定の要件があります。公立学校の先生は、雇用保険法第6条で雇用保険の適用が除外される場合があるため、使えるかどうかをハローワークで確かめてください。
- 派遣研修:給与を受けながら学べます。授業料の一部を自治体が負担する例もあります(高知県は令和8年度、重点派遣のコースで半額を負担)。
出典:文部科学省「大学院修学休業制度QA」mext.go.jp/日本学生支援機構「教員になった者に対する奨学金の返還免除制度(教員免除)」jasso.go.jp/厚生労働省「教育訓練給付制度」mhlw.go.jp/e-Gov法令検索「雇用保険法」(第6条)laws.e-gov.go.jp
7相談から入学までの流れ
休業や派遣は、4月1日から始まる決まりの自治体が見られます(大阪市の要綱、北海道の要項など)。文部科学省のQ&Aは、合格したあとに許可されない事態を避けるため、大学院の受験手続きの前に、必ず任命権者に相談するよう呼びかけています。次の流れは、編集部が整理した一つの例です。
担任や部活動を持っている先生は、年度の区切りに合わせて準備することになります。少なくとも1年以上前から動きはじめると、相談や書類に余裕を持てます。
8辞めて学ぶ道と、学んだあとの道
休業の条件に当てはまらない、または学校の外の分野を自由に学びたい。そんなときは、退職して大学院に進む道もあります。在職のまま学ぶ道と比べると、次のようになります。
在職のまま学ぶ
身分が残り、修了後に戻る場所があります。派遣なら給与も受けられます。一方で、制度の目的や自治体の許可に合わせる必要があり、学べる分野や時期に制約があります。
辞めて学ぶ
分野も国も、自由に選べます。一方で、収入と身分がなくなり、学費と生活費はすべて自分で用意します。戻りたくなったときは、改めて採用選考を受けます。
一度退職した先生向けの選考を設けている自治体もあります。考え方は教員のキャリアプランの描き方にまとめています。海外の学校や日本語教育で経験を積みたい方は、教員が海外で働く4つの方法や日本語パートナーズとは?も参考になります。
学んだあとの道は、一つではない
派遣研修のように、学校へ戻って中心的な役割を担うことが期待される道があります。研究を続ける道もあります。そして、大学院で視野が広がったことで、学校の外で教育に関わる道を選ぶ先生もいます。どれが正解ということはありません。
9学校の外で、自分のやりたい教育をする道

3つの道を並べたうえで、「学校の外で、自分のやりたい教育をする」選択肢の一つとしてNIJINを紹介します。NIJINは、不登校や学校が合わない小中学生が学ぶ「NIJINアカデミー」などを運営する会社です。採用サイトによると、代表の星野は小学校教諭として7年間子どもと向き合い、2022年に創業しました。ミッションは「人を責めず、仕組みを創る。」です。
学校で働いた経験のあと、どう学び、どう道を選ぶか。元公務員から学校の外で教育の事業を始めたタツロー校長が、学歴について問われる動画を紹介します。
▶NIJINアカデミーの先生は、インターネット上の校舎(メタバース校舎)で8人の少人数クラスを担任する仕事です。完全フルリモートの業務委託で、週3日から働けます。必須の時間帯は平日10時〜11時(週3日)と水曜12時〜13時30分です。給与の目安は月20万円〜70万円(フルコミットの場合)で、在宅で週数日なら月5万円程度から始めることもできます。大学院で深めた学びを、少人数のクラスで一人ひとりに向き合う形で試せます。ほかの関わり方は募集職種一覧で確かめられます。
学校に残って学び続ける先生には、授業てらすもあります。小学校の先生が授業力を磨くオンラインのコミュニティで、オンライン研修やセミナーを開いています。
公立学校の先生が、在職中や休業中に報酬を得て外の仕事をするには、任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条、教育公務員特例法第17条、修学休業中のアルバイトは文部科学省のQ&A)。くわしくは教員は副業できる?をご覧ください。学校の外は決まった仕組みが少ない分、自分で考えて動く場面が増えます。
教職大学院を修了し、学校の外を選んだ先生の声

ハイジさん
公立小中学校に8年間勤務し、退職して上越教育大学教職大学院へ進学/NIJINアカデミーのクラス担任・校舎長・広報
「教育課題に立ち向かうには学校だけでなく、他の領域や分野の知識、人との繋がりが不可欠だと気付きました。」
インタビューによると、ハイジさんは、経験則でしか語れない自分がミドルリーダーの立場にいることへの怖さなどから、一度退職して教職大学院に進みました。修了後は就職先にかなり悩んだうえで、学校現場に戻らずNIJINで働くことを選んでいます。
10よくある質問
教員は大学院に行くべきですか?
大学院修学休業の間、給料は出ますか?
働きながら大学院に通えますか?
大学院の費用はどのくらいかかりますか?
採用されてすぐでも休業できますか?
心身の不調で休むことと、修学休業は同じですか?
私立学校の先生も、これらの制度を使えますか?
11まとめ|目的と相談の順番を決めてから
教員が大学院で学び直す道は、在職のまま休んで学ぶ、派遣や夜間・オンラインで働きながら学ぶ、辞めて学ぶ、の3つです。どの道にも良さと負担があります。
- 学びたいことが、A(専修免許状・学位)、B(実践の整理)、C(教育の外の分野)のどれに近いか決めた
- 自分の自治体の要項・条例と、大学院の募集要項を読んだ
- 給与のない期間の生活費・学費・共済の掛金を数字で見積もった
- 受験の前に、管理職と教育委員会へ相談する時期を決めた
- 学んだあと、学校の中と外のどこで生かしたいかを考えた
学び直したいと思うのは、子どもや教育に真剣に向き合ってきた証です。制度を確かめ、自分で選んだ道なら、その学びは学校の中でも外でも必ず生きます。
学んだことを、子ども一人ひとりのために。
学校の外にも、自分のやりたい教育ができる場所があります。
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