この記事では、20〜30代の先生に向けて、5つの道を法律や公式の資料で確かめながら整理し、年代ごとに「いま何をしておくとよいか」をまとめます。どの道が正解かは決めつけません。自分で選ぶための地図としてお使いください。
目次
- 教員のキャリアを考えるときの、5つの道の全体像
- 指導教諭・主幹教諭・管理職など、学校の中の職の違い(学校教育法)
- 大学院修学休業、自己啓発等休業、JICAの現職参加など、身分を保って学ぶ制度
- 兼業のきまりと、学校に残りながら外に関わる方法
- 20代前半・20代後半・30代前半・30代後半で、しておくとよいこと
1教員にキャリアプランが必要な理由
教員の仕事は、目の前の一年がとても濃い仕事です。学級、授業、行事、部活動、保護者対応。一年を走りきることに力を使い、「5年後、10年後に自分はどうしていたいか」を考える時間は、なかなか取れません。
気がつくと、異動の希望も、主任の打診も、その場で答えることになる。そんな経験はないでしょうか。
キャリアプランは、出世の計画ではありません。「聞かれたときに、自分の言葉で答えられる状態」をつくることです。校長との面談で何を伝えるか、どの研修を選ぶか、異動で何を希望するか。方向が決まっていれば、毎年の小さな選択に軸ができます。
制度のうえでも、育ちの道すじが示されるようになった
教育公務員特例法では、任命権者(都道府県の教育委員会など)が、国の指針を参考に、校長や教員の資質の向上に関する「指標」を定めることになっています(第22条の3)。経験や職に応じて、どんな力を身につけていくかの目安です。また、研修などの記録を作成し(第22条の5)、それをもとに指導助言者が相談に応じ、助言をすること(第22条の6)も定められています。
出典:教育公務員特例法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
お勤めの自治体の「教員育成指標」は、教育委員会のページで公開されています。まだ見たことがなければ、一度開いてみてください。自分がいまどの段階にいて、次に何が期待されているのかが分かります。

2【図解】教員のキャリア、5つの道
学校の中と外、5つの道
| 道 | 向いている気持ち | 身分・収入の安定 | 早めに確かめること |
|---|---|---|---|
| ① 専門を深める | 授業や子どもとの関わりを、ずっと磨いていたい | 保たれる | 自治体に指導教諭などの職があるか、選考の条件 |
| ② 学校を動かす | 学校全体の仕組みを良くしたい | 保たれる | 主任の経験、管理職選考の受験資格 |
| ③ 学び直して戻る | 一度立ち止まって、深く学びたい・外を見たい | 身分は保たれる(休業中は給与が出ない制度もある) | 在職年数などの条件、申請の時期 |
| ④ 外にも関わる | 学校は好き。でも学校だけでは物足りない | 保たれる | 服務のきまり、兼業の許可の手続き |
| ⑤ 外で教育を続ける | 学校では実現しにくい教育を、自分の手でやりたい | 働き方によって大きく変わる | 生活に必要なお金、戻る道(採用選考の条件) |
3学校の中のキャリアパス|専門を深める・学校を動かす
学校の中には、「教諭」のほかにもいくつかの職があります。学校教育法の第37条は、小学校に置くことができる職として主幹教諭や指導教諭などを挙げ、それぞれの役割を定めています(中学校などにも同じきまりが当てはまります)。
| 職 | 学校教育法が定める役割(要旨) | こんな先生に |
|---|---|---|
| 教諭 | 児童の教育をつかさどる | まず授業と学級づくりの土台を固めたい |
| 指導教諭 | 児童の教育をつかさどり、教諭その他の職員に対して、教育指導の改善と充実のために必要な指導・助言を行う | 教える専門性で、周りの先生も支えたい |
| 主幹教諭 | 校長・教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、児童の教育をつかさどる | 授業も持ちながら、学校の運営に関わりたい |
| 教頭・副校長 | 校長を助け、校務を整理する(教頭)/校長を助け、命を受けて校務をつかさどる(副校長) | 学校全体の仕組みを整えたい |
| 校長 | 校務をつかさどり、所属職員を監督する | 学校の方向を決める責任を担いたい |
出典:学校教育法 第37条(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp ※主幹教諭・指導教諭は「置くことができる」職で、置き方や名前、選考の条件は自治体によって違います。
道① 専門を深める
「管理職にはならず、ずっと授業をしていたい」。そう考える先生にとって、指導教諭は一つの目印になります。役割は、自分の授業に加えて、ほかの先生の授業づくりを支えることです。教科の研究会で発表する、校内の研究を引っぱる、初任の先生の相談に乗る。こうした積み重ねが、この道につながります。
道② 学校を動かす
学年主任や教務主任などを経て、主幹教諭、教頭・副校長、校長へと進む道です。教育委員会の事務局で、学校への指導や助言にあたる仕事に就く先生もいます。「一つの学級」から「一つの学校」「一つの地域」へと、関わる範囲が広がっていきます。
管理職選考を受けられる年齢や経験の条件は、自治体ごとに決まっています。20〜30代のうちは、条件を知っておくだけで十分です。知っていれば、主任の打診を受けたときに、自分のプランに照らして考えられます。
4学び直して戻る道|休業と派遣の制度
「一度立ち止まって学びたい」「日本の外から教育を見たい」。そう思ったとき、辞めなくても使える制度があります。
| 制度 | 何ができるか | 期間 | 身分・給与 |
|---|---|---|---|
| 大学院修学休業 | 国内外の大学院などで学び、専修免許状を取る | 3年を超えない範囲(年単位) | 身分は保有。給与は支給されない |
| 自己啓発等休業 | 大学等の課程の履修、または国際貢献活動 | 3年を超えない範囲で、条例で定める期間 | 職を保有するが職務に従事せず、給与は支給されない |
| JICA海外協力隊 現職教員特別参加制度 | 開発途上国での協力活動 | 訓練と派遣を合わせて2年間(4月〜翌々年3月) | 現職の身分を保持。所属先から給与が支給される |
| 在外教育施設への派遣 | 日本人学校などで、海外で暮らす日本人の子どもを教える | 原則2年(延長の仕組みあり) | 教育委員会の推薦にもとづく派遣 |
出典:文部科学省「大学院修学休業制度」mext.go.jp/地方公務員法 第26条の5 laws.e-gov.go.jp/JICA「現職教員特別参加制度」jica.go.jp/文部科学省「在外教育施設への教師派遣」mext.go.jp
いずれも、任命権者の許可や教育委員会の推薦が必要で、在職年数などの条件は自治体によって違います。JICAの制度は、正規教員として勤続3年以上、20歳以上46歳未満といった条件が公式ページに示されています。働きながら学べる教職大学院への派遣を行っている自治体もあります。
こうした制度は、申請から実現までに時間がかかります。「いつか」と思っているなら、条件と申請の時期だけは今年のうちに確かめておくことをおすすめします。海外に目が向いている方は、教員のワーホリ|辞める・休む・戻る道もあわせてどうぞ。
私立学校・国立大学附属学校の先生へ ここまでの休業の制度は、主に公立学校の教員についてのものです。私立学校などの場合は、勤務先の就業規則を確認してください。
5学校に軸足を置き、外にも関わる道
学校の仕事は続けたい。けれど、学校の中だけで過ごしていると世界がせまく感じる。そんな先生に合うのが、4つめの道です。
学校の外の先生とつながる
いちばん始めやすいのは、学校の外の学びの場に参加することです。教科の研究会、民間のセミナー、オンラインのコミュニティ。自分の学校とは違うやり方にふれると、「うちの学校の当たり前」が一つの形にすぎないことが分かります。
NIJINにも、先生のための場があります。小学校の先生がオンラインで授業を見合う授業てらす、中学校の先生が本音で相談できるコミュニティ中学校てらすです。
兼業のきまりを知っておく
公立学校の教員は公務員なので、報酬を得て外の仕事をするには許可が必要です。一方で、教育公務員特例法の第17条は、教育に関するほかの職を兼ねたり、教育に関するほかの事業・事務に従事したりすることが本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合には、給与を受け、または受けないで、それができると定めています。
何が認められるかは、任命権者の判断です。この記事では個別の可否を断定しません。くわしい考え方は教員・教師の副業はできる?にまとめています。まずは管理職に相談してください。

6学校の外で教育を続ける道
5つめは、学校を離れて教育に関わる道です。「教員を辞める=教育をやめる」ではありません。
- 学校の外の学びの場で働く:フリースクール、オルタナティブスクール、通信制高校のサポート校など
- 教育の会社で働く:教材、研修、学校を支える事業など
- 自分で場をつくる:教室を開く、事業を起こす
- 組み合わせる:非常勤講師として学校に関わりながら、外の仕事もする
この道は、身分と収入の形が大きく変わります。だからこそ、勢いではなく準備が大切です。選択肢の全体は教員の転職先はどこがある?に、迷っている段階での考え方は教員を辞めるか迷っている先生へにまとめています。
辞めても、戻る道はある
一度退職した教員向けの選考を設けている自治体があります。たとえば東京都は、都の公立学校で正規教員として3年以上の勤務経験があるなどの要件を満たす方について、第一次選考を免除する「カムバック採用」を行っています(令和8年度に実施する選考の案内による)。条件は自治体と年度によって違うため、戻りたい自治体の実施要項を確かめてください。
出典:東京都教育委員会「東京都教員経験者向け カムバック採用案内」東京都公立学校教員採用ポータルサイト
まず、だれかと話して整理する
5つの道のどれが自分に合うのか、一人で考えていると堂々めぐりになりがちです。そんなときは、話しながら整理する方法があります。
NIJINでの関わり方の例
学校の外の働き方を具体的に思い描けるよう、NIJINの募集に載っている形をいくつか紹介します。
| 関わり方 | 働く場所・時間 | 募集に書かれている条件 |
|---|---|---|
| NIJINアカデミーの先生 | 在宅。週3日から。必須の時間帯は平日10:00〜11:00を週3日と、水曜12:00〜13:30 | 給与の目安は月20万円〜70万円(フルコミットの場合。担当する仕事の組み合わせや稼働時間による) |
| リアル校の教室長 | 自宅やいまある教室など。週1日から、9〜16時の間で5時間 | 教員免許は不要。支給は生徒1人あたり月額13,200円が基本。開校視察費 88,000円(税込) |
| 正社員 | 東京に出社 | 年収600万円スタートと800万円スタートの2種類(ジョブ型で、求める水準は高い) |
| ボランティア | 関わり方による | 無償 |
出典:NIJIN採用サイト nijin.co.jp/recruit/ ※報酬は実績で、収入を約束するものではありません。現職の公立教員の方が関わる場合は、服務のきまりを所属先に確認してください。
自分で事業をつくりたい方には、教育の課題を事業で解決したい人のための星野起業塾もあります(教員の起業ガイドも参考にしてください)。

学校の中と外、両方に関わる先生の声

きょーこさん
小学校教員として14年間勤務(うち2年間はJICA海外協力隊としてニカラグアへ)→ NIJINアカデミー 横浜泉校 教室長。小学校の非常勤講師なども兼務
きょーこさんは、参画の経緯をこう話しています。「子育てのために一度現場を離れた今だからこそ、学校の『外』から、子どもたちが真ん中にいて自分らしく輝ける学びの場を創りたい。」
いまは教室長を務めながら、小学校の非常勤講師も続けています。現職での海外派遣(道③)、学校の外の仕事(道⑤)、学校との関わり(道④に近い形)を、時期によって組み合わせてきた一例です。インタビュー記事を読む
公立中学校の教諭を4年間経験し、いまはNIJINアカデミーでリモートで働く、にけさんは、「自分らしく働き方を組み合わせられるのでとても充実しています」と話しています(インタビュー)。

ハイジさん
公立の小学校・中学校で8年間勤務し、一度退職して教職大学院へ/NIJINアカデミー メタバース担任・校舎長
「学校現場にいた時は、ただ目の前の行事を「こなす」だけで精一杯だった自分が、NIJINに入ってからその意識をガラリと変えざるを得なかったんです。」
7年代別のキャリア形成|いま何をしておくか
5つの道は、年代によって見え方が変わります。目安として整理します。年齢の区切りは人それぞれなので、自分に近いところを読んでください。
| 年代 | よくある状況 | しておくとよいこと |
|---|---|---|
| 20代前半 (1〜3年目) | 毎日を回すので精いっぱい。向いていないのでは、と悩むこともある | 授業と学級づくりの土台をつくる。学校の外の先生と一度つながってみる。自治体の育成指標を読む |
| 20代後半 (4〜7年目) | 仕事が回るようになり、「このままでいいのか」が出てくる。最初の異動 | 得意な分野を一つ決める。休業や派遣の制度の条件を調べる。異動の希望を自分の言葉で書く |
| 30代前半 | 学年主任などを任される。結婚・出産・子育てなど、生活の変化が重なる | 5つの道のうち、軸にする道を仮に決める。家計と時間の見通しを立てる。大学院や派遣を考えるなら申請の準備 |
| 30代後半 | ミドルリーダーとして期待される。管理職か、専門か、外か、の分かれ道 | 管理職選考や指導教諭の条件を確かめる。外へ出るなら、在職中にできる準備から始める |
大切なのは、「仮に決める」ことです。決めたプランは、毎年変えてかまいません。仮でも方向があると、研修の選び方や、面談で伝えることが変わってきます。動き出す時期の考え方は、教員の転職はいつから始める?でも紹介しています。

8キャリアプランを書き出す5つの問い
最後に、紙一枚でできる書き出し方を紹介します。きれいにまとめる必要はありません。15分だけ時間を取って、思いつくまま書いてみてください。
キャリアプランの書き出しシート
- 教員の仕事のなかで、時間を忘れるほど好きな場面はどこか
- 反対に、力を奪われていると感じる場面はどこか
- 5年後、どんな一日を過ごしていたいか(場所・相手・時間の使い方)
- そのために、5つの道のどれを軸にするか。組み合わせるならどれとどれか
- 今年のうちに確かめること・試すことを、一つだけ決めるなら何か
書いたものは、校長との面談や、信頼できる先輩との会話で使えます。口に出すと、プランはもう一段はっきりします。
9よくある質問
教員のキャリアプランは、いつ考えればよいですか?
管理職にならないと、キャリアアップにはなりませんか?
教員のキャリアパスには、どんな例がありますか?
辞めずに大学院で学ぶことはできますか?
在職中に、学校の外の教育の仕事をしてもよいですか?
一度辞めたら、教員には戻れませんか?
キャリアプランを考えると、いまの仕事への気持ちが冷めそうで不安です。
教員のキャリアプランは、どのように書けばよいですか?
20代・30代の教員は、キャリアのためにいま何をしておくとよいですか?
10まとめ|道は一本ではない
教員のキャリアには、少なくとも5つの道があります。専門を深める、学校を動かす、学び直して戻る、学校に軸足を置いて外にも関わる、学校の外で教育を続ける。どれも、子どもの学びを支える仕事です。
学校に残り続けることは、変化を避けた選択ではありません。外へ出ることも、逃げではありません。大切なのは、流れで決まるのではなく、知ったうえで自分で選ぶことです。
まずは今年、一つだけ確かめてみてください。育成指標でも、制度の条件でも、学校の外の先生との出会いでも。その一歩が、プランの最初の一行になります。
外へ出る道をくわしく知りたいときは教員の転職ガイド(転職先・進め方・時期)と教員の転職が難しいと言われる3つの理由と進め方、まだ言葉にならない迷いがあるときは「教員はこのままでいいのか」を言葉にする5つの問いかけを読んでみてください。
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- 学校教育法(昭和22年法律第26号)第37条 laws.e-gov.go.jp
- 教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条・第22条の3・第22条の5・第22条の6 laws.e-gov.go.jp
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第26条の5 laws.e-gov.go.jp
- 文部科学省「大学院修学休業制度」mext.go.jp
- 文部科学省「教職大学院」mext.go.jp
- JICA海外協力隊「現職教員特別参加制度」jica.go.jp
- 文部科学省「在外教育施設への教師派遣」mext.go.jp
- 東京都教育委員会「東京都教員経験者向け カムバック採用案内」kyoinsaiyopr.metro.tokyo.lg.jp
- NIJIN 採用サイト nijin.co.jp/先生キャリアコーチ senseicoach.nijin.co.jp
- 社員インタビュー(きょーこさん)nijin.co.jp/(にけさん)nijin.co.jp


