学習塾がフリースクールを併設するには?始め方とメリット・注意点|NIJIN

「うちの塾の教室、日中はずっと空いている」——そんな状態を、単なる「もったいなさ」で終わらせず、地域の子どもたちのための新しい居場所へと変えている学習塾が増えています。それが、学習塾によるフリースクールの併設です。ゼロから新しい施設を借りて開業するのに比べ、すでに教室・立地・指導ノウハウを持つ学習塾には併設ならではの強みがあります。この記事では、なぜ今フリースクール併設が注目されているのかという背景から、費用感、具体的な始め方の4ステップ、押さえておきたい注意点までを、公的データと合わせて整理します。

目次

  1. なぜ今、学習塾がフリースクールを併設するのか
  2. 増え続ける不登校児童生徒数という背景
  3. 併設のメリット|既存資源を活かせる強み
  4. 気になる費用|ゼロから開業する場合との比較
  5. 併設の始め方|4つのステップ
  6. 注意点|押さえておきたいポイント
  7. 【比較】フリースクール併設 vs 新規開業
  8. あわせて読みたい|NIJINで挑戦する仲間の声
  9. まとめ

なぜ今、学習塾がフリースクールを併設するのか

学習塾の教室は、夕方から夜にかけて生徒が集中する一方で、日中は空いたままになっているケースが少なくありません。家賃や光熱費といった固定費は日中も変わらず発生し続けているため、この「空き時間」をどう活かすかは多くの塾経営者にとって共通の課題です。そうした中で近年注目されているのが、学習塾がフリースクールを併設するという選択肢です。単なるスペースの有効活用にとどまらず、学校に通うことが難しい子どもたちの居場所づくりという社会的な意義も併せ持つ点が、多くの教育事業者の関心を集めている理由です。

特に、すでに教室という物理的な場所、講師陣の指導経験、保護者との信頼関係という「資源」を持っている学習塾にとって、フリースクールの併設はゼロから新しい事業を立ち上げるよりもハードルが低いという特徴があります。

増え続ける不登校児童生徒数という背景

フリースクール併設への関心が高まっている最大の背景は、学校以外の学びの場を必要とする子どもたちが年々増加しているという事実です。

346,482人・11年連続増加 文部科学省の調査によると、令和5年度の小中学校における不登校児童生徒数は346,482人(小学生130,370人、中学生216,112人)にのぼり、11年連続で増加しています。前年度の299,048人と比べて48,285人増加しており、10年前の令和元年度(119,617人)と比較すると約2.9倍に膨れ上がっています。不登校を含む長期欠席者は493,440人と、約50万人規模に達しています。

出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」https://www.mext.go.jp/content/20250410-mext_kyoiku01-000041658_03.pdf

この数字は、特別な事情を抱えた一部の子どもだけの話ではなく、どの地域、どの学校にも起こり得る規模に達していることを示しています。学校以外の学びの場の受け皿が、量的にも質的にも不足していると言えるでしょう。

併設のメリット|既存資源を活かせる強み

学習塾がフリースクールを併設する最大の強みは、すでに持っている資源をそのまま活かせる点にあります。

  • 教室というスペースをすでに保有しており、新たに物件を探す必要がない
  • 塾講師としての指導経験やコミュニケーションのノウハウを活かせる
  • 塾に通う生徒の保護者との信頼関係が、地域内での認知・口コミにつながりやすい
  • 夕方以降の塾事業と、日中のフリースクール事業という2つの収益源を同じ拠点で持てる
ポイント:フリースクール全国ネットワークの調査では、株式会社等が運営するフリースクールの割合はこの20年で10.6ポイント増加し16.4%に達しています。個人の善意やNPOだけに支えられる形から、教育事業者が事業として運営する形へと裾野が広がっている流れの中に、学習塾による併設という選択肢も位置づけられます。

出典:フリースクール全国ネットワーク「フリースクール等に関する調査」(2022年実施・2023年報告)をもとにした報道等 https://www.stepup-school.net/news/detail/3496

気になる費用|ゼロから開業する場合との比較

併設を検討するうえで気になるのが、初期費用のイメージです。参考として、学習塾をゼロから新規開業する場合の費用相場を見てみましょう。

新規開業なら総額約500万円が目安 学習塾を新規開業する場合の資金相場は約500万円とされ、内訳としては物件初期費用が約100万円、内外装工事が約100〜200万円、教材費用が約30万円、備品費用が約150〜200万円、広告宣伝費が約50万円、開業手続き費用が数万円、予備費が約50〜100万円とされています。さらに、開業直後の運転資金として最低でも100万〜300万円ほどを見込んでおく必要があるとされています。

出典:学習塾の開業資金相場に関する解説記事 https://fc.try-plus.com/?p=column_2

これに対し、すでに教室を運営している学習塾がフリースクールを併設する場合は、物件初期費用や内外装工事、備品費用の多くを新たに負担する必要がありません。日中の運営体制を整えるための人件費や、フリースクールとしての運営に必要な備品・教材の追加費用が中心となるため、新規開業に比べて初期投資を大幅に抑えられる点は、大きなアドバンテージだと言えます。

夕方以降は生徒で賑わう教室も、日中は多くの時間が空いたままになっている。

併設の始め方|4つのステップ

実際にフリースクールを併設する場合、大まかに次の4つのステップで検討を進めることになります。

ステップ1|対象・受け入れ方針を決める

何人程度の受け入れを想定するか、どの学年を対象とするか、学習支援を中心にするのか、居場所としての側面を重視するのかなど、基本方針を固めます。

ステップ2|学校・教育委員会との連携体制を整える

教育機会確保法第3条第5号では、国・地方公共団体・民間団体等の「密接な連携」が規定されており、フリースクールなどの民間施設との相互協力・補完が促進の対象とされています。出席扱いの仕組みを活用できるようにするためにも、在籍校や教育委員会との情報共有体制を整えておくことが重要です。

出典:文部科学省「教育機会確保法の基本的な考え方」 https://www.mext.go.jp/content/20231018-mxt_syoto02-000021384_001010.pdf

ステップ3|日中の運営体制を整える

既存の塾講師が日中も稼働できるのか、新たにスタッフを採用するのかを検討します。学力指導とは異なる関わり方が求められるため、フリースクール運営の考え方を学ぶ機会を設けることも有効です。

ステップ4|料金体系を設計し、募集を開始する

月謝・入会金・施設維持費などの料金体系を設計したうえで、地域や在籍校、教育委員会などへの周知を進め、募集を開始します。

注意点|押さえておきたいポイント

併設を進めるにあたっては、いくつか押さえておきたい注意点もあります。

注意点:出席扱いの可否はあくまで在籍校の学校長の判断に委ねられています。フリースクール側で一方的に決められるものではないため、事前の連携・説明を丁寧に行うことが欠かせません。また、学力指導を前提とした塾のスタッフィングと、一人ひとりのペースに寄り添うフリースクールの運営とでは求められる関わり方が異なるため、本業とのリソース配分や役割分担も併せて検討しておく必要があります。自治体によっては独自の補助金・助成制度が用意されている場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

【比較】フリースクール併設 vs 新規開業

比較項目学習塾がフリースクールを併設ゼロから新規開業
初期費用既存の教室・備品を活用でき、抑えやすい物件・内外装・備品などで約500万円が目安
立ち上げまでの期間既存の運営体制を土台にでき、比較的短い物件探しから始まるため長くなりやすい
保護者からの信頼構築既存の塾生・保護者との関係性を活かせるゼロから信頼関係を築く必要がある
既存ノウハウの活用指導経験・コミュニケーションノウハウを活かせる運営ノウハウをゼロから蓄積する必要がある

学習塾の一般的な開業費用相場、フリースクールの運営実態調査をもとに作成。

あわせて読みたい|NIJINで挑戦する仲間の声

きょーこさんインタビュー
【小学校教諭から転職】学校では実現できなかった「子どもの興味にじっくり向き合う」教育を、「リアル教室」で。 小学校教員として14年間勤務(うち2年間、JICA海外協力隊としてニカラグアへ派遣)したきょーこさん。現在はNIJINアカデミーリアル教室「横浜泉校」の教室長であり、一児の母でもあります。
伊佐隆さん(いっさ)インタビュー
【民間企業×NIJIN】兼業で実現する自分らしい働き方とキャリア成長 2023年に株式会社LITALICOへ入社。並行して2024年1月よりNIJINアカデミーに参画し、担任やリアル校マネージャーを歴任。2026年4月には「東京学芸大学内ラボ校」を立ち上げ、教室長に就任した伊佐隆さんの兼業スタイル。

まとめ

不登校児童生徒数が11年連続で増加する中、学校以外の学びの場の必要性はますます高まっています。学習塾がフリースクールを併設することは、すでに持っている教室・指導ノウハウ・保護者との信頼関係を活かしながら、ゼロから新規開業するよりも抑えた初期費用で新しい教育の場をつくれる選択肢です。対象方針の決定、学校・教育委員会との連携、日中の運営体制の整備、料金設計という4つのステップを踏みながら、地域の子どもたちにとっての新しい居場所と、事業としての新たな収益の柱を同時に実現していくことができます。

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