「うちの塾の教室、日中はずっと空いている」——そんな状態を、単なる「もったいなさ」で終わらせず、地域の子どもたちのための新しい居場所へと変えている学習塾が増えています。それが、学習塾によるフリースクールの併設です。ゼロから新しい施設を借りて開業するのに比べ、すでに教室・立地・指導ノウハウを持つ学習塾には併設ならではの強みがあります。この記事では、なぜ今フリースクール併設が注目されているのかという背景から、費用感、具体的な始め方の4ステップ、押さえておきたい注意点までを、公的データと合わせて整理します。
目次
- なぜ今、学習塾がフリースクールを併設するのか
- 増え続ける不登校児童生徒数という背景
- 併設のメリット|既存資源を活かせる強み
- 気になる費用|ゼロから開業する場合との比較
- 併設の始め方|4つのステップ
- 注意点|押さえておきたいポイント
- 【比較】フリースクール併設 vs 新規開業
- あわせて読みたい|NIJINで挑戦する仲間の声
- まとめ
なぜ今、学習塾がフリースクールを併設するのか
学習塾の教室は、夕方から夜にかけて生徒が集中する一方で、日中は空いたままになっているケースが少なくありません。家賃や光熱費といった固定費は日中も変わらず発生し続けているため、この「空き時間」をどう活かすかは多くの塾経営者にとって共通の課題です。そうした中で近年注目されているのが、学習塾がフリースクールを併設するという選択肢です。単なるスペースの有効活用にとどまらず、学校に通うことが難しい子どもたちの居場所づくりという社会的な意義も併せ持つ点が、多くの教育事業者の関心を集めている理由です。
特に、すでに教室という物理的な場所、講師陣の指導経験、保護者との信頼関係という「資源」を持っている学習塾にとって、フリースクールの併設はゼロから新しい事業を立ち上げるよりもハードルが低いという特徴があります。
増え続ける不登校児童生徒数という背景
フリースクール併設への関心が高まっている最大の背景は、学校以外の学びの場を必要とする子どもたちが年々増加しているという事実です。
出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」https://www.mext.go.jp/content/20250410-mext_kyoiku01-000041658_03.pdf
この数字は、特別な事情を抱えた一部の子どもだけの話ではなく、どの地域、どの学校にも起こり得る規模に達していることを示しています。学校以外の学びの場の受け皿が、量的にも質的にも不足していると言えるでしょう。
併設のメリット|既存資源を活かせる強み
学習塾がフリースクールを併設する最大の強みは、すでに持っている資源をそのまま活かせる点にあります。
- 教室というスペースをすでに保有しており、新たに物件を探す必要がない
- 塾講師としての指導経験やコミュニケーションのノウハウを活かせる
- 塾に通う生徒の保護者との信頼関係が、地域内での認知・口コミにつながりやすい
- 夕方以降の塾事業と、日中のフリースクール事業という2つの収益源を同じ拠点で持てる
出典:フリースクール全国ネットワーク「フリースクール等に関する調査」(2022年実施・2023年報告)をもとにした報道等 https://www.stepup-school.net/news/detail/3496
気になる費用|ゼロから開業する場合との比較
併設を検討するうえで気になるのが、初期費用のイメージです。参考として、学習塾をゼロから新規開業する場合の費用相場を見てみましょう。
出典:学習塾の開業資金相場に関する解説記事 https://fc.try-plus.com/?p=column_2
これに対し、すでに教室を運営している学習塾がフリースクールを併設する場合は、物件初期費用や内外装工事、備品費用の多くを新たに負担する必要がありません。日中の運営体制を整えるための人件費や、フリースクールとしての運営に必要な備品・教材の追加費用が中心となるため、新規開業に比べて初期投資を大幅に抑えられる点は、大きなアドバンテージだと言えます。
併設の始め方|4つのステップ
実際にフリースクールを併設する場合、大まかに次の4つのステップで検討を進めることになります。
ステップ1|対象・受け入れ方針を決める
何人程度の受け入れを想定するか、どの学年を対象とするか、学習支援を中心にするのか、居場所としての側面を重視するのかなど、基本方針を固めます。
ステップ2|学校・教育委員会との連携体制を整える
教育機会確保法第3条第5号では、国・地方公共団体・民間団体等の「密接な連携」が規定されており、フリースクールなどの民間施設との相互協力・補完が促進の対象とされています。出席扱いの仕組みを活用できるようにするためにも、在籍校や教育委員会との情報共有体制を整えておくことが重要です。
出典:文部科学省「教育機会確保法の基本的な考え方」 https://www.mext.go.jp/content/20231018-mxt_syoto02-000021384_001010.pdf
ステップ3|日中の運営体制を整える
既存の塾講師が日中も稼働できるのか、新たにスタッフを採用するのかを検討します。学力指導とは異なる関わり方が求められるため、フリースクール運営の考え方を学ぶ機会を設けることも有効です。
ステップ4|料金体系を設計し、募集を開始する
月謝・入会金・施設維持費などの料金体系を設計したうえで、地域や在籍校、教育委員会などへの周知を進め、募集を開始します。
注意点|押さえておきたいポイント
併設を進めるにあたっては、いくつか押さえておきたい注意点もあります。
【比較】フリースクール併設 vs 新規開業
| 比較項目 | 学習塾がフリースクールを併設 | ゼロから新規開業 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 既存の教室・備品を活用でき、抑えやすい | 物件・内外装・備品などで約500万円が目安 |
| 立ち上げまでの期間 | 既存の運営体制を土台にでき、比較的短い | 物件探しから始まるため長くなりやすい |
| 保護者からの信頼構築 | 既存の塾生・保護者との関係性を活かせる | ゼロから信頼関係を築く必要がある |
| 既存ノウハウの活用 | 指導経験・コミュニケーションノウハウを活かせる | 運営ノウハウをゼロから蓄積する必要がある |
学習塾の一般的な開業費用相場、フリースクールの運営実態調査をもとに作成。
あわせて読みたい|NIJINで挑戦する仲間の声


まとめ
不登校児童生徒数が11年連続で増加する中、学校以外の学びの場の必要性はますます高まっています。学習塾がフリースクールを併設することは、すでに持っている教室・指導ノウハウ・保護者との信頼関係を活かしながら、ゼロから新規開業するよりも抑えた初期費用で新しい教育の場をつくれる選択肢です。対象方針の決定、学校・教育委員会との連携、日中の運営体制の整備、料金設計という4つのステップを踏みながら、地域の子どもたちにとっての新しい居場所と、事業としての新たな収益の柱を同時に実現していくことができます。
日中の教室を、地域の子どもたちの新しい居場所に。
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