この記事では、国の調査で見る先生の疲れの背景、疲れの原因の見分け方、限界のサイン、相談先、この先の道の比べ方を、公的な資料をもとに整理します。体調のことは医師に、休暇や制度のことは勤務先や教育委員会に確かめてください。
目次
- 国の調査で見る、先生の勤務時間と心理的ストレスの傾向
- 「時間」「心」「人間関係」「やりがいのズレ」「時期」など、疲れの原因の見分け方
- 医師や相談窓口につなぐ目安と、先生が使える相談先の一覧
- 休む・学校の中で変える・外ともつながる・離れる、の比べ方
- 学校の外で、自分のやりたい教育を続ける道
1教員が「もう疲れた」と感じたら|先に結論
朝、目が覚めた瞬間から学校のことを考えてしまう。週末も疲れが抜けない。子どもの前では笑っていても、帰りの車の中で涙が出る。そんな毎日の中で「教員 疲れた」と検索した方へ、先に結論をお伝えします。
- 疲れは、気持ちの弱さではありません。国の調査でも、先生の勤務時間の長さや、若い先生ほど心理的ストレスの状況が悪い傾向が示されています。
- 限界のサインが出ているなら、休むことが先です。この先をどうするかは、少し元気が戻ってから決めても間に合います。
- 疲れには種類があります。時間の疲れ、心の疲れ、人間関係の疲れ、やりがいとのズレの疲れ。原因によって、合う手が変わります。
- 道は「辞める」か「がまんする」かの2つではありません。休む、学校の中で変える、学校に残りながら外ともつながる、学校を離れる。自分を守るために選んだ道なら、どれも正解です。
2先生の疲れは、あなただけではない|データで見る背景
先生の疲れは、一人ひとりの問題だけではありません。文部科学省の調査から、主な数字を並べます。
| 項目 | 数字 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 教諭の1日あたりの在校等時間(平日、2022年度の10・11月) | 小学校 10時間45分、中学校 11時間01分 | 2016年度より約30分減ったが、長時間勤務の先生は依然として多い |
| 心理的ストレスの傾向(同じ調査の分析) | 在校等時間が長い、年齢が若い、担任する学級に長期欠席(不登校)の子がいる教諭ほど、ストレスの状況が相対的に悪い | 20〜30代の先生、担任の先生は疲れをためやすい |
| 精神疾患による病気休職者(2024年度) | 7,087人(全教育職員の0.77%) | 前年度から少し減ったが、割合は横ばい |
| 年代別(同) | 20代 1,310人(0.86%)、30代 2,118人(0.95%) | 20〜30代の割合は全体より高い |
| 1か月以上の病気休暇を含めた数(同) | 精神疾患で13,310人 | 休職の手前で休んでいる先生も多い |
| 休職の要因(教育委員会の認識) | 子どもへの指導そのもの 26.5%、職場の対人関係 23.2%、事務的な業務 12.7% | 仕事の中身と人間関係が中心 |
同じ分析では、管理職が働き方改革を進め、自分の時間管理の意識も高まったと考える教諭は、ストレスの状況が相対的に良いことも示されています。疲れは、本人のがんばりだけでなく、環境やしくみでも変わるということです。
厚生労働省の「こころの耳」の先生向けページも、子どもや保護者への対応、長時間労働をストレスの要因に挙げています。勤務時間のデータは教員の残業時間は平均どれくらい?、負担の実態は教員はブラックすぎる?でくわしくまとめています。
出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」mext.go.jp(PDF)/文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」mext.go.jp(1-1-4 年代別、1-1-11 1か月以上の病気休暇取得者、1-1-19 要因)/こころの耳「こころのケア -学校の先生へ-」kokoro.mhlw.go.jp
3「疲れた」の正体を見分ける|原因の見分け表
ひとことで「疲れた」といっても、中身は人によって違います。原因が分かると、休めばよいのか、仕事のやり方や環境を変えたほうがよいのかが見えてきます。下の表は編集部の整理です。いくつか重なっていることも多いので、いちばん重いものから考えてみてください。
| 疲れのタイプ | よくある様子 | まず試したいこと | くわしい記事 |
|---|---|---|---|
| 時間・量の疲れ | 持ち帰り仕事が続く。睡眠が足りない。週末も回復しない | 眠る時間を先に確保し、やらないことを決める。業務量を管理職に相談する | 残業時間 |
| 心の疲れ(感情の消耗) | 子どもや保護者の気持ちを受け止め続け、家では話す気力もない | 仕事の線引きを決める。学校の外の人に話す | 保護者対応ストレス |
| 人間関係の疲れ | 職員室で気をつかい続ける。相談できる人がいない | 校内か校外に、話せる相手を1人つくる。異動も視野に入れる | 人間関係 |
| やりがいとのズレの疲れ | やりたい教育ができない。何のために働いているか分からない | 好きなこととつらいことを書き出す。学校の外の実践にふれる | やりたい教育 |
| 時期の疲れ | 年度はじめ、行事の前、学期末などの山場で一気にたまる | 山場を見通して、先に休みを入れる | しんどい時期 |
とくに見落とされやすいのが「心の疲れ」です。こころの耳は、教師の仕事には自分の感情を使って相手を理解し受け止める「感情労働」の要素があり、勤務時間が必ずしも長くなくても「燃え尽き」に注意が必要だと説明しています。燃え尽きとは、一生懸命がんばってきたのに期待した達成感が得られず、体が疲れ果て、何に対しても意欲がわかなくなっていく状態のことです。
こころの耳は、がんばっている人にとって「まわりの協力が得られず孤立している感じ」が、もっとも燃え尽きに結びつきやすいとも書いています。
出典:こころの耳「3 ストレスへの対処:こころのケア -学校の先生へ-」kokoro.mhlw.go.jp/「5 職場環境の改善」kokoro.mhlw.go.jp
4限界のサイン|医師や相談窓口につなぐ目安

こころの耳は、ストレスによる反応を「心理面」「身体面」「行動面」の3つに分けて説明しています。こうした反応が長く続くときは、過剰なストレス状態のサインかもしれず、症状が重い、または長く続くときは専門家(精神科・心療内科)に相談することがすすめられています。
相談を考えたいときの目安
次のような状態が続くときは、がまんを重ねずに相談してください。診断のためのチェックではなく、相談のきっかけにするための目安です(編集部の整理)。
- 寝つけない、夜中や明け方に目が覚める日が続いている
- 休みの日も疲れが抜けず、何もする気が起きない
- 朝、学校へ向かうのがつらく、体が動かない日がある
- 子どもと話すことが、おっくうに感じる
- 書類の処理が、いつもの自分より極端に遅くなった
- 「自分がもっとがんばらないと」と、自分を責め続けている
このうち「出勤がつらい」「子どもとのやりとりがおっくう」「書類の処理が極端に遅い」は、こころの耳が先生向けに、早めの受診をすすめるきっかけとして挙げている例です。また、気分の落ち込みや意欲の低下などが2週間以上、毎日続く場合は、精神科・心療内科の専門医を受診することが望ましいとも書かれています。本人は初めのうち「自分がもっとしっかりがんばらないと」と思っていることが多く、まわりが先に変化に気づくこともあるそうです。家族や同僚から「疲れてない?」と言われたら、立ち止まる合図です。
自分の状態を確かめる道具として、こころの耳には「疲労蓄積度セルフチェック2023(働く人用)」(全27問、約5分)や「5分でできる職場のストレスセルフチェック」があります。結果は診断ではありませんが、相談するきっかけになります。
出典:こころの耳「1 ストレスとは」kokoro.mhlw.go.jp/「2 精神障害の基礎知識とその正しい理解」kokoro.mhlw.go.jp/「4 相談機関やスクールカウンセラーの活用」kokoro.mhlw.go.jp(いずれも「こころのケア -学校の先生へ-」)
5まず、疲れを軽くするためにできること
この先のことを考えるのは、少しあとで大丈夫です。いまの疲れを軽くするために、次の順で考えてみてください。
- 眠る時間を先に守る。こころの耳は、長時間労働の問題として、私生活の時間が短くなることと、ストレスを解消するだけの睡眠時間がとれなくなることを挙げています。
- 校内で一人に伝える。学年主任や管理職など、話せる人に「いま、かなり疲れている」と伝えます。業務を一時的に分け合えることもあります。
- 学校の外にも話す。家族や友人のほか、下の表の公的な相談窓口があります。
- 休む。年次休暇を使う、体調が悪ければ医師に相談し、必要なら病気休暇をとります。
- 大きな決断は、少し元気が戻ってから。疲れ切っているときは、選べる道が少なく見えてしまいます。
先生が使える相談先
| 相談先 | 相談できること | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 医療機関(心療内科・精神科、かかりつけ医) | 体調の相談、休む必要があるかの判断 | 眠れない・食べられない日が続くときは早めに |
| こころの耳 電話相談(厚生労働省) | メンタルヘルスの不調、過重労働による心の健康への影響など | 0120-565-455。平日17〜22時、土日10〜16時(祝日・年末年始を除く)。SNS・メールの相談もある |
| 公立学校共済組合 | LINE相談(公認心理師・臨床心理士等)、電話・面談(臨床心理士)、Web相談、24時間の電話健康相談 | 組合員向け。連絡先は組合員専用ページに載っている。メンタルヘルスサイト「ここりんく」もある |
| 教育委員会の相談窓口 | その自治体の教職員向けのメンタルヘルス相談 | 例:東京都教育委員会は、都内公立学校の教職員向けに電話・土日・Webフォームの相談や、精神科医の面接相談を設けている |
| 管理職・学校の事務担当 | 業務量の調整、休暇・休職の手続き | 口で伝えにくいときは、メモや文書で伝える方法もある |
こころの耳の電話相談は、病名の診断や治療方法の提示はできないと書かれています。体の状態は医療機関で相談してください。病気休暇や休職のしくみは教員の休職ガイドに、適応障害と診断されたときの考え方は教員が適応障害になったらにまとめています。
出典:こころの耳「3 ストレスへの対処」kokoro.mhlw.go.jp/働く人の「こころの耳電話相談」kokoro.mhlw.go.jp/公立学校共済組合「健康相談事業」kouritu.or.jp・「メンタルヘルス対策事業」kouritu.or.jp/東京都教育委員会「教員のメンタルヘルス対策について」kyoiku.metro.tokyo.lg.jp
6休む・変える・離れる|この先の道の比べ方
少し落ち着いたら、この先を考えます。疲れの原因が「いまの時期」や「いまの量」なら休むことで、「いまの学校や担当」なら学校の中で変えることで、「学校という働き方そのもの」なら外の道で、軽くなることが多いはずです(編集部の整理)。
| 道 | どんな形か | 合いやすいとき | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 休む | 年次休暇、病気休暇・休職で回復に専念する | 限界のサインが出ている。眠れない日が続く | 期間や給与の扱いは自治体で違う。焦って戻らない |
| 学校の中で変える | 仕事の線引き、校内での相談、担当や学年の調整、異動の希望 | つらさの中心が、量・担当・いまの学校にある | 異動は希望どおりとは限らない。変えられる範囲を確かめる |
| 残りながら外ともつながる | 学校の外の先生のコミュニティ、許可を得たうえでの兼業 | 学校は好きだが、孤立や行き詰まりを感じる | 公立学校の先生の兼業には許可が必要。疲れているときは増やしすぎない |
| 学校を離れる | 退職し、学校の外の教育の仕事や別の仕事に就く | 働き方そのものが合わないと分かった。休んでも同じ疲れが戻る | 収入や働き方の安定は公立学校と性質が違う。元気が戻ってから動く |
迷うときは教員を辞めるか迷う先生へで、決める前に確かめたい7つのことをまとめています。「辞めたいなんて甘えでは」と自分を責めてしまう方は、教員を辞めたいのは甘えではないも読んでみてください。
7学校に残りながら働き方を変える

疲れたからといって、すぐに学校を離れる必要はありません。学校の中でできることもあります。
「ここまで」と線を引く
こころの耳は、社会や保護者・子ども、教育体制の変化に完璧にこたえようとしても、すべてを同時にこなすことはできないので、焦らず一歩ずつと思えれば燃え尽きは避けられるのではないか、と書いています。今日やること、明日でよいこと、やらないことを分けるだけでも、気持ちは少し軽くなります。
「孤立」をほどく
こころの耳は、強い責任感からSOSを出せず、一人で限界まで抱えてがんばっても、良い結果が出ないことは明らかだとしています。校内に話せる人がいないときは、学校の外の先生とつながる方法もあります。
中学校の先生には、全国の中学校教員が集まる無料のオンラインコミュニティ中学校てらすがあります。評価も校内の人間関係も関係ない「先生のサードプレイス」で、読むだけの参加でも大丈夫と書かれています。小学校の先生には、少人数で教科のことや日々の悩みを語り合える、授業力を磨くオンラインコミュニティ授業てらすがあります。
担当や学校を変える
つらさの中心がいまの学校や担当にあるなら、異動の希望を出すことも一つの方法です。書き方は教員の異動希望の書き方にまとめています。
出典:こころの耳「3 ストレスへの対処」kokoro.mhlw.go.jp・「5 職場環境の改善」kokoro.mhlw.go.jp/中学校てらす msterrace.nijin.co.jp/授業てらす jugyoterrace.nijin.co.jp
8学校の外で、自分のやりたい教育をする道

休んでも同じ疲れが戻ってくる。学校という働き方そのものが、自分に合わないと感じる。それでも、子どもと関わることは好きだ。そんな先生には、学校の外で教育を続ける道もあります。
一人で決めきれないときは、話しながら整理する
疲れているときに、一人で次の道を決めるのは大変です。体調の相談は医師に、キャリアの相談は専門家に、と分けると安心です。
公式サイトには「辞めるか、続けるか。その前に、体験する。」という言葉が掲げられています。無料相談・ヒアリングのあと、「コーチング」「メンタリング」「キャリアダイブ」の3つのプログラムで自分の強みを知り、実際の働き方を体験して、教員を続けるか新しい道へ進むかを自分で選ぶ流れです。よくある質問には、転職するか決めていない段階でも相談でき、無理に転職をすすめないこと、平日の夜や土日に日程を合わせられること、秘密を守ることが書かれています。
NIJINという選択肢
学校の外の選択肢の一つとして、NIJINを紹介します。NIJINは、不登校や学校が合わない小中学生が学ぶ「NIJINアカデミー」などを運営する会社です。採用サイトによると、代表の星野は小学校教諭として7年間子どもと向き合い、2022年に創業しました。ミッションは「人を責めず、仕組みを創る。」。子ども、先生、家庭の努力不足に原因を置かない、という考え方です。NIJINアカデミーのリアル教室は、全国に52か所(開校予定を含む)あります。
NIJINアカデミーの先生は、メタバース校舎で8人のクラスを担任し、自分の得意を授業にする仕事です。完全フルリモートで、週3日から働けます。必須の時間帯は平日10時〜11時(週3日)と水曜12時〜13時30分で、給与の目安は月20万円〜70万円(フルコミットの場合)です。採用サイトには、私立学校の教員や子育て中の方などが副業・兼業で関わっていることも書かれています。
まじめな子ほど苦しくなる理由を「性格ではなく環境」という見方で語った、タツロー校長のチャンネルの動画を1本紹介します。子どもについての動画ですが、がんばりすぎる先生にも通じる考え方です。
▶長時間労働に悩んだ時期を経て、学校の外で教える先生の声

インタビューによると、よっちゃんは教員の仕事に大きなやりがいを感じる一方で、長時間労働や古くから続く慣習に疑問を感じ、苦しむ時期もあったそうです。その後、スノーボードで世界を目指す息子さんを家族として支えたいという思いから、10年間勤めた公立学校を退職しました。いまはメタバースで4つのクラスを受け持ち、パソコンとネット環境があれば、スキー場の駐車場からでも子どもたちとつながれる働き方をしています。
良いことだけではありません。よっちゃんも、オンラインでは表情が見えにくく、子どもの本当の気持ちを読み取るのが難しいと話しています。学校の外へ出れば必ず楽になる、とは約束できません。元気が戻ってから、自分に合うかを確かめて選んでください。公立学校に在職したまま関わりたい方は、兼業の許可について先に勤務先に確かめてください。
9よくある質問
教員が「疲れた」と感じるのは甘えですか?
休みの日も疲れが取れません。どうすればいいですか?
病院に行くほどではない気がします。相談だけでもできますか?
疲れていても、年度末まではがんばるべきですか?
疲れていて、転職活動をする気力がありません。
学校に残りながら、学校の外の教育に関わることはできますか?
疲れて辞めたら、後悔しませんか?
10まとめ|疲れは、立ち止まっていいという合図
先生の「もう疲れた」は、弱さではなく、一人で抱えすぎているサインかもしれません。国の調査でも、勤務時間の長さや、若い先生ほどストレスが高い傾向が示されています。いまつらいなら、まず休むこと、そして誰かに話すことを先にしてください。
- 眠る時間を守り、休める日をつくった
- 限界のサインが続くなら、医療機関や相談窓口に連絡した
- 疲れの原因(時間・心・人間関係・やりがいのズレ・時期)を見分けた
- 校内か校外に、話せる人を1人見つけた
- 元気が戻ってから、休む・変える・外ともつながる・離れるを並べて考える
どの道を選んでも、自分の体と心を守りながら選んだのなら、それが答えです。
自分に合う形で、教育を続ける道は学校の外にもあります。
8人のクラスや1対1で、子ども一人ひとりと向き合う仕事です。
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