この記事では、法律と文部科学省・厚生労働省の公式情報で確かめたことをもとに、1年目の先生が置かれている仕組み、つらさの分け方、相談先、残る道・外へ出る道・両方に関わる道を順に整理します。「辞めるのが正解」とも「3年は続けるべき」とも決めつけません。
目次
- 条件付採用・初任者研修など、1年目だけにある仕組み(法律の条文で確認)
- 「辞めたい」の中身を4つに分ける方法と、原因ごとの打ち手
- 学校の中と外にある相談先、匿名で使える公的な窓口
- 残る・出る・両方に関わる、3つの道の比べ方
- 1年目に辞めたいと思った元教員が、その後どう歩んだか
1初任で「教員を辞めたい」と感じるのは、めずらしいことではない
4月に教壇に立ち、気づけば朝から夜まで学校にいる。授業の準備は終わらず、学級はうまく回らず、保護者からの電話に手が震える。「教員 辞めたい 初任」と検索する先生の多くは、そんな日々の中にいるのではないでしょうか。
最初にお伝えしたいのは、1年目に辞めたいと感じることは、向いていない証拠ではないということです。初任の先生は、大学を出たばかりでも、4月の初日から学級担任として30人前後の子どもを預かります。ほかの多くの仕事にある「見習いの期間」が、ほとんどありません。
つらさは、心の健康の統計にも表れています。文部科学省の調査では、令和6年度に精神疾患で病気休職となった公立学校の教育職員は7,087人で、全体の0.77%でした。前年度の7,119人からわずかに減ったものの、割合は横ばいです。要因としては、児童・生徒への指導そのものに関すること、職場の対人関係、校務分掌などの事務的な業務が多いと報告されています。
出典:文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」mext.go.jp
つまり、しんどいのはあなた一人ではありません。そして、しんどさには原因があり、原因には打ち手があります。

21年目の先生が置かれている仕組みを知る
1年目には、2年目以降にはない仕組みが2つあります。知らないまま悩むより、条文で確かめておくほうが落ち着いて考えられます。ここでは公立学校の先生について整理します。
条件付採用は「1年間」
一般の地方公務員は、採用から6か月間が条件付きの採用期間です。公立学校の教諭などは、教育公務員特例法の第12条で、この期間が「1年」と定められています。1年間の勤務を経て、正式な採用になります。
「条件付き」と聞くと不安になるかもしれません。ただ、これは全員に同じように適用される仕組みで、あなただけが試されているわけではありません。
初任者研修と指導教員
同じ法律の第23条は、採用の日から1年間、実践的な研修(初任者研修)を行うことを定めています。あわせて、同じ学校の副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭などの中から「指導教員」を命じ、指導教員は初任者に指導と助言を行うものとされています。
大切なのは、1年目の先生は「一人でできること」を求められているのではなく、「教わりながら育つこと」が法律の前提になっている点です。できないことがあるのは、仕組みのうえでも当たり前なのです。
| 仕組み | 条文で確かめられること |
|---|---|
| 条件付採用 | 公立学校の教諭等は、採用から1年間が条件付きの期間(教育公務員特例法 第12条) |
| 初任者研修 | 採用の日から1年間、職務の遂行に必要な事項の実践的な研修を実施する(同 第23条第1項) |
| 指導教員 | 同じ学校の教員の中から命じられ、初任者に指導と助言を行う(同 第23条第2項・第3項) |
出典:教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第12条・第23条(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
私立学校・国立大学附属学校の先生へ 上の説明は公立学校についてのものです。試用期間や研修の決まりは、勤務先の就業規則で確認してください。
3つらさを4つに分けて、原因を見つける
「辞めたい」は、いくつものつらさが束になった言葉です。束のままだと、答えは「辞める」か「我慢する」の二つしか見えません。4つに分けると、打ち手が変わります。
| つらさの種類 | よくある場面 | まず試せること | 辞めれば解決する? |
|---|---|---|---|
| ① 仕事の量 | 帰れない、土日も準備、睡眠が足りない | やらないことを指導教員と決める。教材は借りる | 学校や学年、時期で変わることが多い |
| ② 授業・学級 | 授業が成り立たない、学級が落ち着かない | 授業を見せてもらう。校外の学びの場で型を知る | 経験と学び方で変わりやすい |
| ③ 人間関係 | 相談できる人がいない、管理職や保護者がこわい | 一人で対応しない。記録を残し、複数で当たる | 異動や校種の変更で変わることがある |
| ④ 仕事そのもの | 学校という仕組みが合わない、やりたい教育と違う | 学校の外の教育の形を調べる。小さく関わってみる | 場所を変えることが答えになりうる |
①〜③は「いまの学校・いまの時期」に結びついたつらさです。④は「学校という働き方」そのものへの違和感です。1年目は①〜③が重なって④のように感じられることが多いので、まず①〜③を一つずつ軽くしてみて、それでも残るものが④と考えると見きわめやすくなります。
原因の分け方は、「教員に向いてない」と感じたらの記事でも詳しく扱っています。
4先に確かめたい、体と心のサイン
考える前に、体の状態を確かめてください。次のようなことが2週間ほど続いているなら、キャリアの判断より先に、休むことと受診を考える時期です。
- 寝つけない、夜中や明け方に目が覚める日が続いている
- 食欲がない、または食べすぎてしまう
- 日曜の夕方や朝の通勤で、涙が出たり動けなくなったりする
- 好きだったことを楽しいと感じられない
- ミスが増え、簡単なことが決められない
- 「消えてしまいたい」と思うことがある
当てはまるものがあるときは、心療内科や精神科、かかりつけ医に相談してください。診断や休養の必要性は、医師が判断します。この記事では断定しません。
休み方の制度(病気休暇や休職)は、公立学校の場合、法律と自治体の条例で決まっています。日数や給与の扱いは自治体によって違うため、管理職か学校の事務担当、所属の教育委員会に確認してください。疲れきった状態での大きな決断は、あとから見直しにくいものです。休んでから決める、という順番を自分に許してください。
5相談先を一つ決める|学校の中・外の窓口
1年目の先生がいちばん苦しくなるのは、「誰にも言えない」ときです。相談先は、学校の中に一人、外に一か所あると安心です。
学校の外で働くメンバーが、いまの働き方を本音で語っている動画も紹介します。相談先を考えるときの手がかりのひとつにしてください。
▶| 相談先 | 相談できること | ポイント |
|---|---|---|
| 指導教員・学年主任 | 授業、学級、仕事の優先順位 | 「何を後回しにしてよいか」を具体的に聞く |
| 養護教諭・スクールカウンセラー | 体調、気持ちの落ち込み | 評価と関わらない立場の人に話せる |
| 管理職(教頭・校長) | 業務の調整、休みの取り方 | 言いにくければ、指導教員に同席を頼む |
| 教育委員会・共済組合の相談窓口 | 健康相談、勤務の悩み | 窓口の有無と使い方は、所属の自治体・組合の案内で確認 |
| 働く人の「こころの耳電話相談」(厚生労働省) | メンタルヘルスの不調、過重労働の悩み | 匿名・無料。SNSやメールの相談もある |
| 医療機関 | 不眠、食欲不振、気分の落ち込み | 診断書が必要な休みは医師の判断による |
働く人の「こころの耳電話相談」 厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」が案内する電話相談です。電話番号は 0120-565-455。受付は平日17:00〜22:00、土曜・日曜10:00〜16:00(どちらも終了10分前まで)。所定の訓練を受けた産業カウンセラーなどが対応し、1回の相談は最大20分が目安とされています。受付時間は変わることがあるため、利用前に公式ページを確認してください。
出典:厚生労働省 こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」kokoro.mhlw.go.jp
校外の先生とつながる
校内に相談できる人がいないときは、学校の外で先生同士がつながる場も選択肢です。NIJINが運営する授業てらすは、小学校の先生が授業力を磨くオンラインコミュニティです。中学校てらすは、全国の中学校教員が集まる無料の教員コミュニティです。同じ立場の先生と話すだけで、「自分だけではない」と分かることがあります。
6残る道・外へ出る道・両方に関わる道
体を守り、原因を分け、相談先ができたら、道を並べます。どれか一つが正解ということはありません。
| 道 | 具体的な形 | 合いやすい人 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 残る道 | 年度末まで続ける/休んでから戻る/異動や校種の変更を希望する | つらさの中心が①〜③にある人 | 休みの制度、異動の希望の出し方(管理職・教育委員会) |
| 外へ出る道 | 年度末で退職する/年度途中で退職する/民間や学校の外の教育へ | つらさの中心が④にある人、体調が限界に近い人 | 退職の時期と手続き、次の収入の見通し、戻る道 |
| 両方に関わる道 | 学校の外の学びの場に参加する/休日にボランティアで関わる/退職後に非常勤と別の仕事を組み合わせる | まだ決めきれない人、教育は続けたい人 | 在職中の兼業の決まり(許可が必要な場合がある) |
残る道:1年目と2年目は、同じではない
1年目のつらさの多くは、「初めて」であることから来ます。行事の流れも、通知表の書き方も、保護者会の進め方も、すべて初めてです。2年目は、少なくとも1年の見通しを持って始められます。「いまの大変さが何年も続く」とは限りません。
年度末までの見通しを持ちたい方は、教員を年度末で辞めたい場合の時系列の記事が参考になります。
外へ出る道:早く出ることは、失敗ではない
体調が限界に近いとき、あるいは学校という働き方そのものが合わないと分かったとき、早めに出ることは一つの判断です。1年目で辞めたからといって、教育に関わる道が閉じるわけではありません。学校の外にも、子どもと関わる仕事はあります。選択肢は教員を辞めたあとの仕事の記事にまとめています。
両方に関わる道:小さく試す
「辞める」と「続ける」の間には、広い場所があります。校外の学びの場に参加する、無償のボランティアとして関わってみる、などです。公立学校の先生が報酬を得て働く場合は、兼業の許可などの決まりがあります。詳しくは現職教員の副業のルールの記事と、所属の教育委員会で確認してください。

初任の経験を整理する、短い記入メモ
1年目で働き方を見直すとき、「何もできなかった」と一括りにすると、相談したいことも次の仕事で使える経験も見えにくくなります。勤務年数の評価と、実際に担当した仕事の整理は分けて構いません。まず一週間の仕事から一つだけ選び、次のメモを埋めてみてください。すぐ転職するためだけでなく、今の学校で担当や支援を相談する材料にもなります。
| 振り返る場面 | 事実として書くこと | 次に確認・相談すること |
|---|---|---|
| 教材の準備 | 対象の学年、準備した教材、自分で変えた説明 | 準備時間を短くするため共有できる教材はあるか |
| 学年・行事の仕事 | 任された範囲、期限、誰と進めたか | いま優先する仕事と、引き継げる仕事は何か |
| 子どもへの関わり | 困った場面と、同僚へ相談して試した工夫 | 一人で対応する範囲と、相談する基準は何か |
例えば「授業がうまくできない」から一歩進めて、「説明が届きにくかった単元で、同僚に相談して図を使う資料に変えた。準備には時間がかかったため、次回は共通教材を使えるか相談したい」と書く形です。これは記入方法を説明する架空の例で、成果や数字を足す必要はありません。試したことがうまくいかなかった場合も、その経緯を残せます。
学校の外の求人を見る場合は、求められる仕事内容とこのメモを照合します。「初任でも応募できるか」「研修はどこまであるか」は求人ごとに確認し、年数だけで採用可否を断定しません。文章にする段階では、教員の職務経歴書の書き方と例文を参考に、担当・行動・確認できる変化の順に整理できます。
7辞めると決める前に確かめておきたいこと
外へ出る道を選ぶ場合も、次の5つを確かめてからにすると、あとで「知らなかった」が減ります。
- 退職の時期と伝え方:いつまでに誰に伝えるかは、自治体や学校で決まりがあります。まず管理職に確認します。
- お金の見通し:1年目は退職手当や貯金が多くないことがふつうです。金額や計算は学校の事務担当や教育委員会に確認し、数か月分の生活費の見通しを立てます。
- 健康保険と年金:退職後の手続きは、市区町村の窓口や年金事務所で確認します。
- 戻る道:教員採用選考は、退職後に受け直すことができます。文部科学省によると、教員免許更新制は令和4年(2022年)7月1日に発展的に解消されました。年齢の条件や教職経験者向けの選考は自治体ごとに違うため、戻りたい自治体の実施要項を見ておきます。
- 次にやりたいことの仮の答え:決まっていなくてもかまいません。「子どもと関わり続けたいか」だけでも言葉にしておくと、次の一歩を選びやすくなります。
出典:文部科学省「教員免許更新制」mext.go.jp
辞めたあとに悔やみやすい点は、教員を辞めた後に後悔する?の記事にまとめています。
81年目に「辞めたい」と思った先生のその後
NIJINには、1年目に苦しんだ経験を持つ元教員がいます。公開している社員インタビューから、二人の言葉を紹介します。歩んだ道は、それぞれ違います。

授業てらすのスタッフ(元小学校教員)
小学校教員として3年間勤務 → 運動教室を経営しながら、NIJINのボランティアスタッフとして「授業てらす」に関わる
「教員1年目。私は月90時間を超える残業と孤独の中で、文字通り『死んだような目』をして教壇に立っていました。」と振り返ります。当時は「もう辞めたい…」と毎日自問自答していたそうです。そこで出会ったのが、校外の学びの場でした。1年目を乗りこえて3年間勤めたあと、学校の外から先生を支える側に回っています。インタビュー記事を読む

國吉 樹里さん
通称:じゅりたろう/公立中学校の保健体育教員を7年間 → 休職・退職 → NIJINアカデミー メタバース担任
じゅりたろうさんは、1年目をこう話しています。「新卒1年目から担任、部活動の主顧問、運動会の運営などを任され、とにかく『周りの先生に追いつかなきゃ』と必死に教師になろうとしていました。」そして、「今思えば、できないことがあって当たり前なのに」と続けます。その後、心身の調子を崩して休職・退職を経験し、いまは在宅で子どもたちと関わっています。インタビュー記事を読む
一人は学校に残って3年働いたあとに外へ出て、もう一人は7年働いたあとに休み、別の形で教育に戻りました。どちらも「1年目に辞めたかった」ことが、その後の道を狭めてはいません。

9よくある質問
初任で辞めたいと思うのは、甘えでしょうか?
条件付採用の1年間に辞めると、不利になりますか?
年度の途中で辞めることはできますか?
3年は続けたほうがいいと言われます。本当ですか?
誰にも相談できません。どこに話せばいいですか?
一度辞めたら、もう教員には戻れませんか?
1年目で辞めても、教育の仕事は続けられますか?
新卒の教師が、3か月ほどで辞めたいと思うのは早すぎますか?
初任で教員を辞めたいとき、つらさはどう整理すればよいですか?
教員1年目で退職を考えるとき、先に確かめておくことは何ですか?
10まとめ|決める順番を守れば、どの道も選べる
初任で「教員を辞めたい」と感じるのは、めずらしいことではありません。1年目は、条件付採用と初任者研修の期間であり、教わりながら育つことが前提の1年です。
決める順番は、①体と心を守る、②つらさを分ける、③相談先を一つ決める、④道を並べる、⑤時期を決める。この順番さえ守れば、残ることも、外へ出ることも、両方に関わることも、どれも選べます。
学校に残って2年目を迎える先生も、外で教育を続ける先生も、子どもと向き合おうとした1年目の経験はなくなりません。
休み方の制度は教員の休職ガイド(期間・給料・手続き)、つらさの中心が職員室にあるときは教員の人間関係がつらいときの整理と4つの選択肢、保護者とのやり取りにあるときは教員の保護者対応のストレスから自分を守る7つの方法も参考にしてください。
学校の外にも、教育を続ける場所があります。
まずは、どんな仕事があるかを見てみませんか。
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- 授業てらす jugyoterrace.nijin.co.jp/中学校てらす msterrace.nijin.co.jp/先生キャリアコーチ senseicoach.nijin.co.jp
- NIJIN 採用サイト nijin.co.jp/recruit/


